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『親子で学ぶ科学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド』 創元社 [科学一般]


親子で学ぶ科学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

親子で学ぶ科学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

  • 作者: キャロル・ヴォーダマン
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/10/11
  • メディア: 単行本



たいへんビジュアルな本です。まるで色見本帳のようです。見ていてわくわくして参ります。生物・化学・物理の範囲に属する項目が、各項目ごと見開き2ページで解説されていきます。

しかし、その内容は決してやさしいものではありません。訳者(渡辺滋人氏)の記しているように「簡潔でそれなりにわかりやすい説明を試みているものの、噛んで含めるように手取り足取りゆっくりと読者を導いていくタイプの本と(は)違うように思います」。実際、けっこう高度な内容で、ひとり独習して理解に至るには高校程度の知力・理解力が求められるのではないかと思います。

この本は「親子で学ぶ」とタイトルにあるように、親御さんの役割がたいへん重要であるように思います。目次は「科学って何?」「科学の方法」から始まり、それらが簡潔に説明されています。そこから見えてくるのは、自分の子どもの好奇心が単にオドロキとして終わるのではなく、科学的なモノの見方へとつながるよう導いていく務めが親には課せられていることであるように思います。そこには、こんにち確かなモノと見なされている科学的情報も、更新されつつ今日に至っていることを認めることも含まれてきます。たとえば、「科学って何?」の「知識を支える」の欄には〈周期表の配置〉に関して、次のようなコメントが付されています。「1989年に発表された周期表は、ロシア人化学者メンデレーエフの功績とされているが、現実には何世紀にもわたる元素研究の積み重ねの結果でもある」とあります。そのような見方は、いま学んでいる確かなものとされている知識も更新された積み重ねの結果としてあり、将来変化する可能性もある知識と見なしていくことにもなると思います。そうした見方は、子どもの思いに、将来 “自分が” 科学的知識を更新する可能性のあることを悟らせるものとなるかもしれません。

「まえがき」にある著者の言葉からは、本書を用いて子どもを導く親の側に科学の十全な知識が決して求められてはいないことが示されています。次のようにあります。「あらゆる科学的事象に対して、たとえ答えがわからなくても親自身が『へぇー!』という驚きの声を挙げることがどれほど大切であるか、二人の子どものシングルマザーである私も実感しています。科学では気づかせるべき『正しい答え』は必ずしも必要なものとはいえません。」「この本がすべての親たちのガイド役になることを、私たちは願っています」。

補足する解説は十分にできないにしても、親子で本書をのぞき込んで、子どもといっしょに「へぇー!」という驚きの声を挙げることは、いくらでもできそうです。そして、むずかしく思えるところは、もっと詳しくやさしい解説書に当たることもできるでしょう。それこそ、「調べ学習」の良い材料になるように思います。そのようにして、親子で驚きを共有し、科学への興味関心を高めていく点で、本書は格好の書籍であるように思います。


物理学は歴史をどう変えてきたか:古代ギリシャの自然哲学から暗黒物質の謎まで

物理学は歴史をどう変えてきたか:古代ギリシャの自然哲学から暗黒物質の謎まで

  • 作者: アン ルーニー
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2015/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07


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『小島信夫の文法』 青木健著 水声社 [文学・評論]


小島信夫の文法

小島信夫の文法

  • 作者: 青木 健
  • 出版社/メーカー: 水声社
  • 発売日: 2017/11/25
  • メディア: 単行本



1955年 『アメリカン・スクール』で第32回芥川賞を、1965年 『抱擁家族』で第1回谷崎潤一郎賞を受賞した小島信夫。本書は、一時期その編集者として接し、後に「小島信夫賞」の運営や選考にも係わり、「小島さんの10年余りの晩年、近くで濃密な時間を過ご」した詩人で作家でもある青木健による小島信夫とその作品に関する評論、エッセイを集成したもの。1995年から2017年までに新聞や文芸誌等に発表したもの。

評者は小島信夫のよい読者ではない。実のところ代表作の『抱擁家族』も読んではいない。それでも、森敦が『月山』を書きあぐねていたころ、『抱擁家族』の下読みをし、小島になんども書き直しを命じ、それに小島がへこたれずに応じた話、『抱擁家族』というタイトルそのものも森の提案であることなどを森富子著『森敦との対話』で読んでいた。また、保坂和志が小島とたいへん親しくしていたことも聞いていた。そんな関係で本書を手にした。

本書の内容は、目次に沿えば〈『抱擁家族』をめぐって〉から始まり、〈四十年後の『抱擁家族』 小島信夫×青木健〉という対談で終わる。はじめからずっと目をとおし対談を読むに至って、『抱擁家族』において小島は、自分の家族関係をモデルとして、アメリカナイズされていく日本での家族のあり方を考えていたのだな、それを終生追いかけたのだなと思った。また、いわゆる「私小説」ではないものの、モデルとなった個人にとっては、(もちろん著者自身もそうだが)たいへん犠牲をともなうものであることを知った。血が流されなければ犠牲ではない。多くの犠牲のうちに成った『抱擁家族』は、それゆえ今日でも十分読むに値する小説であるように直観する。

本書のタイトル『小島信夫の文法』は、小島信夫の文章作法に関するものだ。小島は基本的に「文芸の話題以外興味を示さ」ない人物だったようである。少なくとも著者の知るかぎりそうであったようだ。独り言のようによく言ったことは「一体、小説というのは何なんだろうね」だそうである。

以下、小島の文法についての記述をいくらか引用してみる。〈小島信夫ほど「解決する」ことに価値を置かなかった作家はいない。いつも、「現在」を問いつづけ、「問い」に対しては「答え」ではなく、新たな「問い」を、千石(英世)の用語を借りれば「複層」させることで自身の小説のスタイルを築きつづけた作家だった。〉 / 〈「君自身にとって解決済みのことは書く必要も意味もない。君自身にとっていつまでも謎であることだけを書きたまえ」・・・私の耳朶で生前の小島さんの声音が蘇える。〉

襟を正して小島作品に当たるよう促される書籍だ。


【目次】
Ⅰ 『抱擁家族』をめぐって //Ⅱ 小島信夫の文法 ( 小島信夫の文法 / 「階段のあがりはな」について/ 未完の相貌/ 『抱擁家族』の時代 / 小島批評の魅力/ 小説の鏡としての演劇/ コジマの前にコジマなく…… / 小島信夫さんを悼む/ 裸の私を生誕させる文学)// Ⅲ 謎の人 ( 小島さんの「初心」/ 物語るということ / 追悼文の恐さ/ 笑顔の不在 / 小島さんの詩心 / 謎の人 / 『一寸さきは闇』の頃 / 小島さんの戦争体験 / 愛の記憶 / 小島信夫の思い出)// Ⅳ 四十年後の『抱擁家族』 小島信夫×青木健 / あとがき

小島信夫(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B3%B6%E4%BF%A1%E5%A4%AB


抱擁家族 (講談社文芸文庫)

抱擁家族 (講談社文芸文庫)

  • 作者: 小島 信夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/01/27
  • メディア: 文庫



アメリカン・スクール (新潮文庫)

アメリカン・スクール (新潮文庫)

  • 作者: 小島 信夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/06/27
  • メディア: 文庫



小島信夫批評集成〈8〉漱石を読む

小島信夫批評集成〈8〉漱石を読む

  • 作者: 小島 信夫
  • 出版社/メーカー: 水声社
  • 発売日: 2010/10
  • メディア: 単行本




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『絵本を深く読む』 灰島 かり著 玉川大学出版部 [児童文学]


絵本を深く読む

絵本を深く読む

  • 作者: 灰島 かり
  • 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
  • 発売日: 2017/11/14
  • メディア: 単行本



著者は2016年に亡くなった。本書はその遺著である。硬質の文章で絵本について解説がなされてゆく。その物語の構造を解き明かし、同様の物語のバリエーション、発展形を示していくのを面白く思った。その射程には『赤ずきん』のような古いものから、ずっと新しい最近のものまでが入る。

「はじめに」末尾で著者はいう。「・・・ストーリー運びを追うだけでは味わいつくせない細部の描写にこめたメッセージや遊びを豊かに受けとめるために、研究者もそれに響きあえる『身体』を備える必要がある。 / わたしは、現実世界に向きあうための『身体』には、たいした自信がないけれど、たっぷりどっぷり作品に浸る『読みの身体』には、いささか自信がある。 / さあ、ごいっしょに、身体ごと絵本の世界を楽しみながら、新しい絵本論のわき出る泉をさがしに出かけよう。」

絵本の読解には、ふつう以上の「身体」が必要とされる。大人の本とは異なり、絵本は「絵」と「文字」で構成され、そして、語り聞かせる際には「声」が関係し、また、語り聞かせる「場」所も関係してくるからだ。そうした、「絵本独自のありよう」をさぐるのが「この本の目的」と著者自身記しているが、まさに、そのような「身体」を鍛錬して身につけた方ならではの著作であるように思う。

「あとがき」で、鈴木晶氏が書いている。〈「絵本をどう読むか」についてまとまった評論を集めたのが本書である。・・略・・第1章から4章までいわゆる論文調で書かれているが、妻がもっとも得意としたのは第5章みたいな、読者に語りかける文体である。本書に収録されていない短い評論は、ほとんどそうした「おしゃべり文体」で書かれていて、妻の人柄が偲ばれるので、いずれ出版したいと願っている」。大いに期待したい。

以下目次

はじめに 絵本論をさがして

第1章 成長を占う旅 少年の場合(1森へいく少年、その基本 / 2森へいく少年、その完成形 / 3森のさらにその先へいく少年 / 4心の奥の森へいく少年)

第2章 成長を占う旅 女の子の場合(1女の子はおつかいにいく / 2小さい母になる女の子たち)

第3章 ポストモダン絵本に登場する見えない友だち(1見えない友だち ジョン・バーニンガムの場合 / 2見えない友だち アンソニー・ブラウンの場合)

第4章 小さい友だち ビアトリクス・ポター論 (1ビアトリクス・ポター その「観察眼」と「頭痛」 / 2『ピーターラビット』の得意な魅力 / 3絵本作家から農場主へ)

第5章 絵本サロン 絵本サロンを開きます / サロン1日め シャーリー・ヒューズ / サロン2日め マリー・ホール・エッツの描いた、男の子の冒険と女の子の冒険 / サロン3日め 「育てる者」と「育てられる者」の葛藤 『まどのそとのそのまたむこう』に描かれた命の神秘 / サロン4日め 進化する赤ずきんたち 

ポストモダン絵本はどう受け継がれているか

付録 灰島かり 論文リスト 灰島かり 著作リスト

あとがき 鈴木晶


絵本翻訳教室へようこそ

絵本翻訳教室へようこそ

  • 作者: 灰島 かり
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2005/05/01
  • メディア: 単行本




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抜粋 『 H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って』 ミシェル・ウエルベック著  [エッセイ]


H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って

H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って

  • 作者: ミシェル・ウエルベック
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: 単行本



ラヴクラフトの“成熟した”達成の数々は、これまでミシェル・ウエルベックがなしたように正当な評価を与えられたことは一度もなかった、ということである。あなたがすでにラヴクラフトの全作品を読んでいるなら、『世界と人生に抗って」はラヴクラフトその人に立ち戻るように促し、彼をあらたな光の下で見させるだろうし、あなたがプロヴィデンスの「暗き王子」に初めて行き合うのであれば、これ以上に高揚させる刺激的な道を開いてくれるものはないだろう。24(スティーヴン・キング「ラヴクラフトの枕」)


怪奇幻想作家(そのなかでももっとも偉大な作家のひとり)である彼は、人種主義を容赦なくその本質的な源泉、そのもっとも深い源泉に連れ戻す。それはすなわち“恐怖”である。彼の人生は、まさにその実例となっている。みずからのアングロサクソン出自の優越性を確信する地方のジェントルマンとしての彼は、ほかの人種に対しては、ある種の距離を置いた軽蔑しか感じていなかった。だが、ニューヨークの下層区域に滞在したことが、すべてを変えることになる。あの異質な連中は、“競争相手”に、隣人に、そして、恐らく暴力の場では優位に立つ敵になるのだ。まさにそのとき、マゾヒズムと恐怖からなる錯乱が昂じるなかで、殺戮への呼びかけがやってくるのである。32

(ラヴクラフトの文体)彼の文章は、実際ただただ誇張や錯乱のなかで展開する、というわけではない。そこには時に、極めて稀有なある種の鋭敏さ、明晰な深さといったものがある。そこには次のような段落が見いだされるー「省略」-わたしたちが立ち会っているのは、感覚的認識の極度の鋭敏さが、いまにも世界の哲学的認識への反転を引き起こそうかという瞬間である。言い換えれば、わたしたちは詩の只中にいるのである。34「序」


「ラヴクラフトの真価を認めるためには、おそらく幾多の辛酸を嘗めていなければならない・・・」ジャック・ベルジュ 39

人生は苦しみと失望に満ちているものだ。したがって、あらたなリアリズム小説を書くことは無益である。現実一般についてなら、わたしたちはすでに、どれくらいのところで我慢すればいいかを知っているし、人生についてそれ以上を学ぼうという気にはほとんどなれない。人間そのものからして、わたしたちにはもはや大した好奇心を抱かせることはない。驚くべき繊細さを帯びたあの「描写」の数々、「場面」、逸話の数々・・・これらすべては、ひとたび本を閉じてしまえば、すでに「現実の人生」のある一日に充分に味わわされた軽い嫌悪感を思い出させるばかりだ。 / ここで、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの言うことに耳を傾けてみよう 「わたしは人間と世界に飽き果ててしまったので、一頁に少なくとも二件の殺人を織り込んだり、あるいは地球外空間からやってくる名状し難い恐怖の数々を論じたりすること以外には、何も関心をもつことができないのだ」。 / ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890~1937)。 / わたしたちは、あらゆる形態の現実主義(リアリズム)にたいする、至高の解毒剤を必要としている。// 人は人生を愛しているときには読書はしない。それに、映画館にだってほとんど行かない。何と言われようとも、芸術の世界への入り口は多かれ少なかれ、人生に“少しばかりうんざりしている”人たちのために用意されているのである。 / ラヴクラフトの場合は、“少しばかりうんざりしている”、というのを少々超えていた。1908年、18歳のとき、「神経衰弱」なるものの餌食となって無気力状態に陥り、それが10年余り続くことになる。・・彼は家に閉じこもり、母以外とは話もせず、昼間はずっと起床することを拒み、一晩中、寝間着でうろつくのだ。 / おまけに、物を書くことすらしなかった。 / 何をしていたのか?たぶん読書を。だがそれも確かではない。・・・40

ラヴクラフトはといえば、自分がそんな世界(大人の世界とその価値観)とは何の関係もないっことを知っている。そして、いつも敗者を演じ続けている。理論においても実践においても、彼は少年時代を失くし、同じく信仰も失くしたのだ。彼は世界に嫌悪感を抱き、“もっとよく見れば”物事は別の姿を見せるかもしれないなどとは思ってもみなかった。宗教については、知識の進歩によって時代遅れになった「甘い幻想」に等しいと見なす。例外的に機嫌がよい時期には、宗教を信仰することの「魔法の輪」について語ることにはなる。しかしそれは、結局自分には入ることが許されないと感じていた輪なのだ。 / あらゆる人間の渇望すべての絶対的な無意味さにここまで侵食され、骨まで刺し貫かれた人間は、きわめて稀だろう。43

人生に倦み疲れた心にとって、ラヴクラフトを読むことが逆説的な慰めとなるのがなぜなのかはよくわかる。実際、どんな理由であれ人生のあらゆる様態にたいして本物の嫌悪を抱くにいたったすべての人に、ラヴクラフトを読むよう勧めることができる。初めて読んだときに引き起こされる神経の動揺は、場合によっては相当なものだ。一人でニヤニヤしたり、オペレッタの曲を口ずさんだりもする。実存への眼差しが変わるのだ。 / ジャック・ベルジュによってこのウイルスがフランスに持ち込まれて以来、読者数の拡大は電撃的だった。大部分の感染者と同様、わたしもHPLを16歳の時、ある「友達」を介して知ることになった。まさに衝撃そのものだった。文学にそんなことができるとは知らなかった。その一方で、いまだに本当にそうだとは納得していない。“実のところは、文学ではない”なにかがラヴクラフトにはある。48

実のところ、普遍的な射程をもった唯一の指示は、1922年2月8日付で・・に宛てられた一通の手紙に見いだされる・・・/ 「わたしは物語を努めて書こうとすることは決してありません。そうではなくて、ある物語が書かれることが“必要になるとき”まで待つのです。一篇の短編を書こうとして意図的に仕事に取りかかる場合、結果は平板で、質の低いものとなります」。69

彼はまさに自力で次の発見に至ったものと思われる。すなわち、科学的語彙の使用は詩的想像力にとって途方もない刺激となりうる、ということだ。正確で、微に入り細を穿ち、同時に理論的な背景に富んだ内容、すなわち百科事典のそれは、錯乱的かつ陶酔的な効果を創りだすのである。122

「褐色の面貌をした個体は、どちらかというと爬虫類的な特徴を示しており、シュー音を伴った母音省略と素早い子音連続で自己表現していたが、それは原始アッカド語のいくつかの方言を思わせるものだった」124

トポロジー(位相幾何学)の詩的な力を予感したのは彼が最初だったし、形式論理体系の不完全性についてのゲーデルの仕事に震撼したことにおいてもしかりである。なにやら胸の悪くなるような含意をもつ奇妙な公理系は、おそらくクトゥルフ神話の中心を構成する、謎に満ちた存在たちの出現のために必要だったのだろう。125

最後期の物語群においてHPLが用いている科学的観察の報告書の文体は、次のような原則に対応している“描写される出来事や存在が途方もないものであればあるほど、描写は正確で冷静なものなるだろう”、ということだ。131

今日から見れば、ラヴクラフトはいつにも増して不適応者であり隠者であるのかもしれない。1890年生まれの彼は、若い頃にすでに同時代人から時代遅れの反動と見なされていた。彼が生きていたなら、今日のわたしたちの社会について何を考えたのかは想像に難くない。彼の死後、社会は彼がますます嫌悪しただろう方向に進化してゆくことをやめなかった。機械化と近代化は、彼が全身全霊をもって愛着を抱いていたあの生活様式を、避けがたく破壊してきた(しかも、彼は人間が諸事象を統御する可能性についてはいささかの幻想も抱いてはいない。ある手紙に書かれているように、「この現代社会のすべては、蒸気と電気エネルギーの大規模な応用方法を発見したことの、絶対的かつ直接的な帰結以外の何ものでもない」)。彼が忌み嫌っていた自由と民主主義の観念は、地球全体に広まった。「わたしたちが嫌悪するもの、それは単に変化そのものだ」と言い放った人間にとっては身の毛もよだつものに他ならなかったはずの進歩観は、ほとんど無意識的な自明の信条になった。リベラルな資本主義はあらゆる人々の意識にまで支配を拡大してきた。その歩みとともに、拝金主義、広告、経済効率性への不条理でシニカルな崇拝、物質的な富への排他的かつ節度なき欲望が生まれてきた。さらに悪いことに、自由主義は経済的領域から性的領域にまで拡大してきた。感傷的なフィクションはすべて、木っ端みじんになった。純粋さ、純潔、貞節、慎みは、嗤うべき烙印となった。ひとりの人間の価値は、今日ではその経済力と性愛のポテンシャルによって測られるーすなわち、まさにラヴクラフトが、もっとも強く嫌悪していた二つの物によって、である。 / 怪奇幻想作家というものは一般的に反動的だが、それはごく単純な話で、彼らがとりわけ、あるいは言ってみれば“職業的に”、〈悪〉の存在に意識的だからである。ラヴクラフトの多くの弟子の誰一人として次の単純な事実に着目していないことはかなり不思議である。つまり、現代社会の進歩が、ラヴクラフト的な恐怖症をいっそう存在感のある、いっそう“生々しい”ものにしてきたという事実である。


ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))

ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))

  • 作者: H・P・ラヴクラフト
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1974/12/13
  • メディア: 文庫




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『 H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って』 ミシェル・ウエルベック著 国書刊行会 [エッセイ]


H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って

H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って

  • 作者: ミシェル・ウエルベック
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: 単行本



本書は「20世紀という時代は、・・おそらく叙事詩的な怪奇幻想文学の黄金時代として記憶されるだろう。そもそも、ハワード、ラヴクラフト、トールキンの出現を許した時代である」と著者の述べるうちのひとりH・P・ラヴクラフト(1890年~1937年)に関するエセーであり、著者の「最初に出した本」。

著者のウエルベックのプロフィールを見ると、「世界で最もセンセーショナルな作家の一人」と紹介されている。だが、評者は、著者もその作品も知らない。ラヴクラフトの名前は聞いた覚えがあるが、本書ではじめて、その人物と作品、またその創作技法について知ることとなった。

本書によると、ラヴクラフトは、清教徒的な(ただし、その希望を共有することなく、世俗への拒絶を共有する)ジェントルマンであったようである。その文学から“生活”は排除されていたようだ。カネや性は論外のものであったらしい。自分の作品が世間で受け入れられることにもさほど関心がなく、結婚も女性側のアプローチを受け入れてしたものの、それも破綻するという生活力のない人物であったらしい。しかし、それは見ようによってそう見えるというだけで、より積極的な見方をとるなら、本書副題にあるように「世界と人生に抗って」いたということにもなる。面白いことに、ラブクラフトの「傑作群」は(結婚が破綻するなどして)「人生が終わったところから始ま」った、とある。

著者の執筆の動機はなんだろう。自分の敬愛する作家の略伝と作品の魅力を書くことで、ラヴクラフトから決別・独立しあらたな独自の作品世界を構築していこうとの思いがあったのだろうか。ラヴクラフトが取った「世界と人生に抗」うに際しての手法、その「攻撃技術」を言語化し、自分のものとしようとしたのだろうか。いずれにしろ、本書はラヴクラフトその人とその創作の方法・あり方、さらにはその代表作を知る良い案内書となっている。

以下、目次

「ラヴクラフトの枕」スティーヴン・キング // 序 // 第1部 もう一つの世界 (儀礼としての文学) // 第2部 攻撃の技術 (晴れやかな自殺のように物語を始めよ / 臆することなく人生に大いなる否(ノン)を宣告せよ / そのとき、大伽藍の偉容が見えるだろう / そしてあなたの五感、いわく言い難い錯乱のベクトルは完全な狂気の図式を描きだすだろう / それは時間の名づけ難い構造のなかに迷い込むだろう) // 第3部 ホロコースト (反伝記 / ニューヨークの衝撃 / 人種的憎悪 / わたしたちはハワード・フィリップス・ラヴクラフトから魂を生贄にするすべをいかに学ぶことができるのか / 世界と人生に抗って) // 読書案内 訳者あとがき


ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
ウィキペディアから
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%88



地図と領土 (ちくま文庫)

地図と領土 (ちくま文庫)

  • 作者: ミシェル ウエルベック
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2015/10/07
  • メディア: 文庫



クトゥルーの呼び声 (星海社FICTIONS)

クトゥルーの呼び声 (星海社FICTIONS)

  • 作者: H.P.ラヴクラフト
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




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『はじめて地理学』 富田 啓介著 ベレ出版 [科学一般]


はじめて地理学

はじめて地理学

  • 作者: 富田 啓介
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本



これから「地理学」を学ぼうという後輩に、先輩としてその内容と魅力を親切に伝えようとの熱意を感じる。たいへん理解しやすい書籍だ。

著者はいう。〈地理学とは、ずばり「空間の科学」です。地球表面に広がるありとあらゆる事象を対象にし、その分布や地域の多様性を見つめ、分析するのが地理学です。〉

そして、「地理学が扱う課題は、突き詰めれば3つにな」り、それは「地誌学」と呼ばれる分野と「系統地理学」と呼ばれる分野、そしてそれらの課題を扱っていくための基礎となる〈地図学、測量学、地理情報学〉と呼ばれる分野であるという。

そして、「系統地理学」には、「地形学や気候学のように自然現象を扱う自然地理学」と「社会現象や社会環境を扱う人文地理学」とがあるが、著者の専門は「自然地理学」の方。

著者はいう。〈高校までの教科としての地理は、「何がどこにあるか」という事実をひたすら覚える、暗記物のイメージが強いかもしれません。しかし、事実を覚えるだけでは地理「学」とは言えません。たとえば「ここに都市がある」という事実を知ったなら、地理学では、どうしてそこに人が集まっているのだろうか、と考えを進めます。それを追求するためには、人だけでなく、人を取り囲む大地や大気についても知る必要があるでしょう。このように、地理学は、地表面に見られる(引き起こされる)あらゆる事象を、互いの関係性を見極めながら解き明かしていく学問です。地理学の研究は、ジグソーパズルを解くように、わくわくするとても楽しい活動です。〉

著者は「山田さんの朝」「山田さんの夕」という創作をとおして、地理学の対象となりうるものを示し、「地理学が日常に溢れていることを」示す。それには、姓の分布、起床時間の地域差、人の移動やそのパターン、地価(地価を反映した家賃も含む)の分布、地域の伝統食・ご当地グルメのような食材や料理、距離や空間という要素があれば恋愛や交際、手書き地図を用いて人が空間をどう認識しているか、パワースポットのような特定の場所に固有のイメージがどのように形成されていくか、人の行動範囲や経済活動に影響を及ぼす日照時間の変化、人の一生における行動経路(ライフパス)の分析、個人の生活史(ライフヒストリー)を分析して地域社会や自然環境の移り変わり、土地条件と災害との関わり、子どもが身近な空間をどう認知し、発達の過程でそれがどう変化するのか、などなどである。

「本当のあとがき」で著者はいう。〈この本の内容は第1章を除いて自然地理学に偏っています。〉そして、本書の特徴として〈ほかの地理学に関する書籍ではほとんど取り上げられていない、生物多様性や自然環境の保全に関する知見を、随所に織り込んだこと〉と記している。実際、そのような記述が多く、地学や植生学、生態学、環境学など隣接分野の情報も多く示される。

評者にとってこれまで、それら隣接分野の本からの情報だけでは、不明瞭であった点(たとえば「植生遷移」「極相」に関する知識)が本書をとおして明らかにされたのは嬉しいことであった。「地理学を学ぶと いつもの景色が違って見える」と帯に記されてあるが、そのとおり、本書をとおし地球レベル、地域レベルで、景色が違って見えてくるようになるように思う。


里山の「人の気配」を追って  雑木林・湧水湿地・ため池の環境学

里山の「人の気配」を追って  雑木林・湧水湿地・ため池の環境学

  • 作者: 富田 啓介
  • 出版社/メーカー: 花伝社
  • 発売日: 2015/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




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2018-01-15 [通読・積読中]


日本人とリズム感 ―「拍」をめぐる日本文化論―

日本人とリズム感 ―「拍」をめぐる日本文化論―

  • 作者: 樋口桂子
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


「あなたはリズム感が悪すぎる!」突きつけられた衝撃の一言。どうしてリズム感が悪いのか。そんな素朴な疑問からはじまったリズムの謎をめぐる冒険は、文学・絵画・歴史・文化・風土などあらゆるジャンルを横断して、西洋とはまったく違う日本独自のリズムの正体を明らかにしていく―。リズムをめぐる謎から描き出される、おどろきと発見の日本文化論。


H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って

H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って

  • 作者: ミシェル・ウエルベック
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: 単行本


『服従』『素粒子』で知られる《世界一センセーショナルな作家》、ミシェル・ウエルベックの衝撃のデビュー作、ついに邦訳! / 「クトゥルフ神話」の創造者として、今日の文化に多大な影響を与え続ける怪奇作家H・P・ラヴクラフトの生涯と作品を、熱烈な偏愛を込めて語り尽くす! / モダンホラーの巨匠スティーヴン・キングによる序文「ラヴクラフトの枕」も収録。


この星の忘れられない本屋の話

この星の忘れられない本屋の話

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/12/08
  • メディア: 単行本


北京の食品マーケットに隣接する隠れ家のような書店から、ワシントンDC、ベルリン、ナイロビ、イスタンブールの古書店街まで―作家を育てたのはどの国でも「街の書店」だった。世界の注目作家15人のアンソロジー。


編む人―ちいさな本から生まれたもの

編む人―ちいさな本から生まれたもの

  • 作者: 南陀楼 綾繁
  • 出版社/メーカー: ビレッジプレス
  • 発売日: 2017/11/01
  • メディア: 単行本


本を編む、場を編む、人を編む…出版の可能性を探りつづける9人へのインタビュー。


まんがでわかるまんがの歴史 (単行本コミックス)

まんがでわかるまんがの歴史 (単行本コミックス)

  • 作者: ひらりん
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/11/04
  • メディア: コミック


日本のまんがはどのように誕生したのか?わかりやすくまんがで解説! / 独自の発達を遂げた日本のまんがは、一体いつ、どうやって生まれたのか?豊富な資料を駆使し戦中、戦前まで遡って日本まんがのルーツを紐解くサブカルチャー研究コミック。まんがを読んでまんがを知ろう!


日本人の9割が知らない 「ことばの選び方」大全 (できる大人の大全シリーズ)

日本人の9割が知らない 「ことばの選び方」大全 (できる大人の大全シリーズ)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2017/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


「かど」と「すみ」はどう違う? / 「富士山に『のぼる』」と言っても「富士山に『あがる』」と言わないのはなぜ?
「こんどの電車」と「つぎの電車」はどちらが先にくる? / 「1週間ごとに会う」と「1週間おきに会う」ではどちらがよく会う?… / こんな日本語表現の違いを豊富なイラストで解説。 / この一冊で日本人の9割が知らない「ことばの選び方」が絵で見てわかる!

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2018-01-13 [通読・積読中]


重力で宇宙を見る

重力で宇宙を見る

  • 作者: 二間瀬敏史
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


アインシュタインの2つの奇妙な予言、重力波と重力レンズは、21世紀の新たな宇宙論の扉をどのように開いたのか―。「時空」のゆがみに切り込み、宇宙誕生の謎、そして宇宙の真の姿に迫る!!

絵本を深く読む

絵本を深く読む

  • 作者: 灰島 かり
  • 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
  • 発売日: 2017/11/14
  • メディア: 単行本


絵本の世界には「絵」と「文」、音読する「声」、大人と子どもがともにいる「場」が発生する。『かいじゅうたちのいるところ』『もりのなか』『はじめてのおつかい』『こんとあき』『ピーターラビットのおはなし』などの絵本の世界を身体ごと楽しみながら、新しい絵本論を切り拓く。絵本をどう読むか──著者の遺作となった一冊。


はじめて地理学

はじめて地理学

  • 作者: 富田 啓介
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本


「地理学」っていったい何をする学問なんだろう?そんな疑問を抱いた方にこそ読んでいただきたい地理学の入門書です。本書では具体的な事例を紹介しながら、地理学の考え方や魅力をお伝えします。身近な場所や旅先で目にする風景や物事の疑問が、地理学の知見によって解き明かされる面白さを体験していただくことができるでしょう。また自然地理学の基礎知識をおおよそ網羅しているので、イチから学びたい方にも最適です。本書を一冊読み終えれば、いつもの風景が違って見えるようになるかもしれません。

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

  • 作者: 渡辺 正峰
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/11/18
  • メディア: 新書


物質と電気的・化学的反応の集合体にすぎない脳から、なぜ意識は生まれるのか―。多くの哲学者や科学者を悩ませた「意識」という謎。本書は、この不可思議な領域へ、クオリアやニューロンなどの知見を手がかりに迫る。さらには実験成果などを踏まえ、人工意識の可能性に切り込む。現代科学のホットトピックであり続ける意識研究の最前線から、気鋭の脳神経科学者が、人間と機械の関係が変わる未来を描きだす。

高校生が教わる「情報社会」の授業が3時間でわかる本 大人も知っておくべき“新しい”社会の基礎知識

高校生が教わる「情報社会」の授業が3時間でわかる本 大人も知っておくべき“新しい”社会の基礎知識

  • 作者: 沼 晃介
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


高校では、2013年から「社会と情報」と「情報の科学」の授業が行われています(どちらか1科目を選択)。これらの授業では、社会と情報技術の結びつき、つまりIT社会の基礎知識を学ぶことができます。しかし、現在の大人のほとんどは、この授業を受けたことがありません。社会やビジネスにおいて、今まさに激動の時代に直面している大人こそ、IT社会の基礎知識が必要です。そこで本書では、より入門的な「社会と情報」の教科書で扱われている内容をベースに、大人向けにポイントを絞って解説します。

朝鮮思想全史 (ちくま新書)

朝鮮思想全史 (ちくま新書)

  • 作者: 小倉 紀蔵
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: 新書


朝鮮思想史を概観すると、思想の純粋性をめぐる激烈な闘争が繰り返し展開されてきたことがわかる。思想闘争は政治闘争と直結し、その様相は朝鮮時代の儒教や、解放後の韓国と北朝鮮のイデオロギーに典型的に見られる。そしてその思想の純粋志向性はやがて運動となり、国家や共同体の成員の肉体的生命を超え「朝鮮的霊性」が燃え上がる―それが現代の韓国・北朝鮮の激烈な思想運動にもつながってきた。朝鮮思想をできるだけ客観的に捉え、全体を俯瞰するはじめての試み。

沖縄の基地の間違ったうわさ――検証 34個の疑問 (岩波ブックレット)

沖縄の基地の間違ったうわさ――検証 34個の疑問 (岩波ブックレット)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


沖縄の経済は基地がないと成り立たない?辺野古基地は普天間の代わり? 海兵隊は日本を守るために沖縄にいる? 辺野古建設に反対する人たちは日当をもらっているアルバイト? ネット上で広まった間違った情報を、一つずつ事実と数字で撲滅。沖縄の基地問題、ほんとのところはどうなんだ!

もの言えぬ時代 戦争・アメリカ・共謀罪 (朝日新書)

もの言えぬ時代 戦争・アメリカ・共謀罪 (朝日新書)

  • 作者: 内田樹
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: 新書


日本の未来はどうなるのか?現代の知性が「この国のかたち」を問い直す!監視社会の到来を危惧する声が高まるなかで「共謀罪」法が施行された。北朝鮮危機を眼前に政府の説明責任は放棄され、繰り返される権力濫用、社会に蔓延する忖度と萎縮に歯止めがかからない。私たちは「いつかきた道」をたどっているのか?最近のわが国の「右傾化」の流れを見据えながら、精鋭論客24人が「日本の未来」を提示する。

アメリカ 暴力の世紀――第二次大戦以降の戦争とテロ

アメリカ 暴力の世紀――第二次大戦以降の戦争とテロ

  • 作者: ジョン・W.ダワー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/11/15
  • メディア: 単行本


第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の混沌を生み出してしまったのか。『敗北を抱きしめて』の著者があらたに取り組む、アメリカの暴力の歴史。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した待望の書。トランプ時代を危惧する日本語版序文を付す。
京大式DEEP THINKING

京大式DEEP THINKING

  • 作者: 川上浩司
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2017/11/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

「思考のスタミナ」をつけて、考え抜ける体質になる――
これが本書のコンセプトです。


新哲学対話: ソクラテスならどう考える? (単行本)

新哲学対話: ソクラテスならどう考える? (単行本)

  • 作者: 飯田 隆
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/11/10
  • メディア: 単行本


「よい/悪い」に客観的な基準はあるか?人工知能は人間と同じように思考することができるのか?言葉の「意味」とはいったい何か?「知っている」とはどういうことか?そのための条件が不可避的にはらむパラドックスとは―「価値」「人工知能」「意味」「知識」をめぐる問いは現代哲学の超難問だ。もしも、ソクラテスとその素晴らしい仲間たちが今に甦って、こうした問いをめぐり侃侃諤諤議論を始めたら、どのような「対話篇」が生まれるだろうか。甦った古代の賢人たちが哲学的難問をめぐり繰り広げる知の饗宴。

図書館のこれまでとこれから: 経験的図書館史と図書館サービス論

図書館のこれまでとこれから: 経験的図書館史と図書館サービス論

  • 作者: 大串 夏身
  • 出版社/メーカー: 青弓社
  • 発売日: 2017/10/30
  • メディア: 単行本


公共図書館は、地域住民のために本と知識・情報を収集して提供し、仕事や生活の質を向上させ、創造的な社会にしていくための施設である。そのためには、図書館員一人ひとりがレファレンスの専門職として知識と技能を高めていく必要がある―この基盤を経験も織り交ぜて提言する。21世紀の図書館がさらに進化するために!

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『ボクが逆さに生きる理由 誤解だらけのこうもり』 中島宏章著 ナツメ社 [生物学]


ボクが逆さに生きる理由 誤解だらけのこうもり (Natsume-sha Science)

ボクが逆さに生きる理由 誤解だらけのこうもり (Natsume-sha Science)

  • 作者: 中島宏章
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2017/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



本書は、「哺乳類全体の20%に相当する約1300種(そのうち日本に生息するのは35種)」いるという翼手目(コウモリ目)の本。ちなみに哺乳類を「種類の多い順に」、いくと、げっ歯目(ネズミ目)、翼手目(コウモリ目)、トガリネズミ目となり、「これらトップ3だけで哺乳類全体の7割以上、すなわち4000種を占め、一番種類の多いネズミ目は約2300種で全体の40%を占めている」という。しかし、その中で、飛翔できる(滑空するだけでなく)のはコウモリだけである。

本書でなにより実感できるのは、それほど数多くいるというコウモリについて無知であったことだ。薄暮の世界をひらひらはらはら飛び回るコウモリについて、本書はたいへんよく知ることのできる本である。書籍タイトルにある「逆さ」の問題もそうだが、「超音波」の問題もある。超音波を利用して暗闇を飛び、餌を捕獲するのであれば、その目はどうなっているのか。見えるのか見えないのか。手の構造は、どうなっているのか。鳥の翼、羽とどうちがうのか。そのスピードは、ひらひらはらはらに見られる知恵は、捕食者である猛禽類等との関係は・・・。また、「野生下のコウモリの最高齢記録は・・41歳という」、その「驚異的な長寿」の秘密についても記される。

本書はNatsume-sha Scienceシリーズの一冊である。その編集方針によるものなのだろう。単に、コウモリの生態について知るだけでなく、関連する科学的情報も多く示される。飛ぶに際しての「揚力」の問題や「超音波」による「エコーローケーション」、コウモリと感染症の話題では「ウイルス」が、「スーパー高度な休眠方法」として「トーパ」が取り上げられる。また、「生態系サービス(Ecosystem service)についての記述もあり「コウモリの経済的価値はアメリカだけで2兆円!」などという見出しもある。

著者は、「面白くて面白くて、それこそ夜型(というか、コウモリ型?)人間になっていき、コウモリの世界にどんどんハマって」、「気づけばいつの間にか会社を辞め、コウモリをメイン」の写真家となった方(巻頭8ページカラー写真あり。科学的専門的知識は監修者に頼っている)。著者の、コウモリ好き好き大好きという愛情の伝わってくる一冊である。

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目次『京大式DEEP THINKING』川上浩司著 [教育・学び]


京大式DEEP THINKING

京大式DEEP THINKING

  • 作者: 川上浩司
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2017/11/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



キーボードでタイプする。Aというキーを押すと「あ」とでる。こうした操作は「人との約束」(人間のつくった約束事)であり、物理現象によるような「物との約束」ほどには当てにならない。その点、鉛筆による筆記によって、黒鉛をなぞった跡が紙面に残るのは、「物との約束」に属する。それは、さらに実感を伴った経験として印象付けられる、と著者はいう。

また、著者がいうには、手書きで写す際に、筆写ミスが生じることもある。タイプするほどに速くは写せない。丁寧に手書き筆写するには時間がかかる。一見無駄に見えもする。しかし、その間さまざまなイメージが湧いたり、アイデアが浮かんだりもする。そうしたものは、玉石混交だが、キーボードでタイプするなかでは得られないものであるという。

以下のように「目次」をタイプしても、ソレは無くは無い。ミスは発生するし、こんな見出しのもとで論議が展開されていたのかと気づいて驚くこともあるし、見出しキーワードの内容を想起できないなどなど、である。それでも、やはり、手書きして得られる気づきの方が多いであろうように思う。

「筆写・書写」という読書法
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2006-09-15

以下『目次』

Intoroduction 「浅い思考」でよしとしていないか
「頭が良い」とは、深く考えられることである / 「深く考える」を考えるための考察 / 「素早い反応」は本当に考え抜いた結果か? / 「即応即答」で考える力はつかない / 「深く考える」とは「プロセスをたどる営み」である / 「思考力」が簡単に失われる仕組み / 「考える力」を取り戻そう

第0章 DEEP THINKINGの極意 (「深い思考」の正体を知る)
「考える」と「深く考える」の根本的な違いとは? / 「着地点」ではなく「道中」に集中する / 「深く考える」とは「一工程、意識する」こと / ここを考えないと「わかったつもり」に陥る / 「すぐやる人」になってはいけない? / 「価値あるユニーク」を生む唯一無二の思考 / 「モレなく、ダブりなく」思考のワナ / 鉛筆1本で人を動かす「デザインのチカラ」 / 第0章のポイント

第1章 なぜ「鉛筆で記す人」は「できる人」っぽいのか? (「実感」と「物のコトワリ」に迫るDT)
なぜ「鉛筆で記す人」は「できる人」っぽいのか? / 「PCでメモ」されると冷たく感じるたしかな理由 / 「物との約束」に実感は宿る / 実感が薄れる「人との約束」 / 浅い思考で終わる「ある前提」とは? / 「iPhone」がベストセラーになった背景 / ペンタブのサインが「いつも下手」なのはなぜ? / 「正しく疑う」スキルを養う / 「秘書」を通してコミュニケーションしていないか? / 京大で「不完全なものさし」が3万本以上売れたわけ / 「発想の転換」を生み出す思考 / 「ヒントが残った状態」を維持する / 思考を脳から取り出す / 「頭の中のごちゃごちゃ」は「物理的法則」に寄せる / なぜ「ボールペン」や「シャーペン」ではだめなのか? / 「習熟度」でモノを視る / 「有限性」の重要性 / 人類が抱える「厄介な法則」とは / 「what」ではなく「with」を考える / 「腑に落ちる」カラクリ / 第1章のポイント

第2章 「わかりやすい説明」に数字は要らない(「説明」と「数字」をめぐるDT)
なぜ、社長の話はつまらないのか? / 「わかりにくい説明」を戦略的に採用する / 「言葉にできない」が武器になる / 京都の舞妓はなぜ「わかりにくく」伝えるのか? / 「わざ言語」は深く伝わる / 「再現性の低い言葉」で考える効用 / 「具体的な説明」は本当に完璧か? / 「数字」を使うと説得力が弱まるケース / 言葉を「合理化」してはいけない / 説明力を深めるヒント「4つの尺度」(「比例尺度」「間隔尺度」「順序尺度」「名義尺度」) / 「エビデンス・マジック」を頭に入れておく / エビデンスは「分母」を疑う / 「会議は通るが売れない企画」はこう作られる / 「数」を求めすぎた思考の末路 / 「客観と主観の切り替え」で説明レベルを上げる / 説明に「実感」を載せる訓練 / 第2章のポイント

第3章 鉛筆を持つ者だけが「たどる力」を手に入れる (「プロセス」と「経験」にまつわるDT)
なぜ「わかるようでわからない」のか / 「本物に出会わないと本物にならない」 / 「ユニークな解き方をする学生」はどう考えるのか? / 「プロセス優先」の法則 / 「読書」で思考が浅くなる? / 「スキルの飛躍」に必要なある営み / 「文脈」で考える習慣をつける / 「思考の連続性」を問う / 「考える人」は「消しゴム付き鉛筆」を使わない理由 / 「減らす」ことに時間をかける / 何にでも「目的」を設定しない / 「前後の変化」を注視する / 持つべき「視点」はこの3つ / 「形から入る」とマインドがシフトする / 「思考できる余地」を自分に作る方法 / 「スロー」が考える力を伸ばす / 鉛筆で「思考のけもの道」を作る / 第3章のポイント

第4章 「必要なもの」を抜く1本の勇気 (「発想力」と「本質」についてのDT)
「京大生の部屋」はアイデアの宝庫? / 「知識量」と「思考力」は比例するのか / 「思考できるAI」に学ぶ理想的なインプット術 / 「考える力」を「発想力」につなげる / 大量の「アイデアもどき」を生む危険な発想法 / 「企画はかけ算」は「イチかバチか」と同義 / 「リンゴをかじる」ように考える / 「経験」でなく「手段」を引く / 「一瞬の不便」にアイデアは潜む / 「観覧車から窓を引く」ように発想する / 引き算して「妙な説得力」を出す / 手段を引くと「価値」が高まる / 「企画書を作る」前にこう考える / 「スローシンキング」の原則 / 「常識」に向けるべき目とは? / 「なんとなく見える灯台」を仮目標とする / 我々は、「答えがない」からメシが食えている / 思考を「縦」に深めれば「横」に拡がる / ソ連の宇宙飛行士が鉛筆を選んだ理由 / 第4章のポイント





要点で学ぶ、デザインの法則150 -Design Rule Index

要点で学ぶ、デザインの法則150 -Design Rule Index

  • 作者: William Lidwell
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2015/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




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