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『この世に命を授かりもうして (幻冬舎文庫)』酒井 雄哉インタビュー [宗教]


この世に命を授かりもうして (幻冬舎文庫)

この世に命を授かりもうして (幻冬舎文庫)




著者は「千日回峰行」を2度満行している。今日的感覚で俗っぽく言うなら「宗教的トレイルランナー」で著者はあった。全盛時であれば「マルコ・オルモも敵ではなかったかもしれない」などと読んでいて思った。

本書は、2013年1月23日に12時間に及ぶ癌の手術を受け退院した後の自坊におけるインタビューである。このインタビューを受けたのが9月上旬。そして、その23日に著者は亡くなった。

それにしては、全体のトーンが明るい。「それは宗教家ですから・・」という意見もあろうが、それにしても活力を感じる。

平易な言葉で衒(てら)いなく正直に語っている。師のひとり箱崎文応阿闍梨を著者は「おじいさん」と呼ぶ。その「おじいさん」の言葉に、「行き道は いずこの里の 土まんじゅう」がある。その意味は「どこで命を落とそうが、いま歩いているその道が自分の墓場になる、ここで朽ちるんだというつもりで歩け、と行をする者としての強い覚悟」の表明である。本書から伝わりくる活力は、師の言葉を自分の生き方とした人物から発せられるものであるからであるのだろう。

著者は「行者だけでなく、普通の人だって」その「つもりで生きたほうがいいんじゃないかと僕なんか思うよ」と屈託ない。いつ死んでも悔いの残らないよう、今を精一杯生きよという師の教えを自ら実践してきた方ならではの屈託のなさであるし、明るさなのだろう。死の直前のインタビューにもその覚悟が反映しているということだ。

表紙写真は、2度目の「千日回峰行」万行のときの写真だという。見ていると思わず笑みが伝染してくる。精一杯生きている人は、それがたとえ“自分の”行であったとしても、他者に良い感化を及ぼすものとなるにちがいない。

人生を歩くことに捧げたという言い方も著者に関して言えるかもしれない。歩くことは生きることで、歩くことを通して命と死について考え続けた著者の歩くことについての話は興味深い。それは、つまり人生についての話ということでもある。

「時を止めた男の教え」鏑木毅(トレイルランナー) 
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2013-06-25


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