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『骸骨考:イタリア・ポルトガル・フランスを歩く』 養老 孟司著 新潮社 [エッセイ]


骸骨考:イタリア・ポルトガル・フランスを歩く

骸骨考:イタリア・ポルトガル・フランスを歩く




1937年にお生まれの養老先生は、アンデルセンの『赤い靴』をはいた少女がダンスを止められなくなったように、骸骨になるまで本を書き続ける運命にあるもよう。出版社、編集者に担ぎ出されて、このたびはヨーロッパの骸骨をめぐる旅。

冒頭はこう始まる。《中欧のお墓を巡礼して、その連載記録がまとまった(『身体巡礼 ドイツ・オーストリア・チェコ編』新潮文庫)。今度は南欧である。どうしてこんなこと、始めちゃったのかなあ。自分でもよくわからない。人生と同じで、旅はひたすら続く》。

先生の論議は、動きが速い。その論理は飛ぶ。少なくとも評者にはそう思える。飛躍する論理にとまどいつついると、先生は「つまり・・」「だから・・」と結語し、障害物を難なく飛び越える。ところが評者は、飛躍についていけず、壁にドンと衝突する。しかし、それでウラミが生じるかというと、それが小気味いいときている。こまったものだ。論理についてはいけないが、直観的に(妥当かどうかは分からないものの、すくなくとも)障害物を越えるために論理の橋をわたす労苦に値するように思えるのだ。だから、読んでいくと、ビートたけし扮する土建屋のオヤジに、「バカヤロ、このこの」と小突かれている気分になる。

そんなこんなで、「どうしてこんなこと、始めちゃったのかなあ」の思いを引っさげながらの旅のなかで、先生は昔を思い出し、現在を見わたし、昆虫のことなど取り上げながら、「意識」「情報」「言葉」「主語Ⅰ 」「戦争」「自由」のことなどに思いをめぐらす。「研究費申請」「小保方晴子氏」「ユリアヌス帝に追われたアタナシウス」」「脳死」などなどの話題もでる。

そして、最後にはちゃっかりと「どうしてこんなこと始めちゃったのかなあ」の謎をみずから解く。《(お墓や骨は)「言葉にならないもの」、現代風にいうなら「情報化され得ない」ものに対する、儚い憧憬が表されているのであろう。つまり自分は若いころから同じ主題を追い続けている。そう気づいて、自分で驚く(「あとがき」)》と書く。

読んでいくとナルホド、取り上げられているのは、先生がNHKラジオの『文化講演』などで、よく話題にしていることである。そういうことであれば、読む必要もなかろうと思いもするが、「儚い憧憬が表されているので“あろう”」と先生自身書いている。断言はしていない。つまりは、さらに『骸骨考』は深められる余地がある。まあ、考えを深めるのは先生にお任せするとして、こちらは、「バカヤロ」と小突かれたいために、また読むのだろうな・・・。


運のつき 死からはじめる逆向き人生論

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  • 作者: 養老 孟司
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2004/03/18
  • メディア: 単行本



上記書籍の新版は以下

養老孟司の人生論

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  • 作者: 養老孟司
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
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  • メディア: 新書



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『探検家、40歳の事情』角幡 唯介著  文藝春秋 [エッセイ]


探検家、40歳の事情 (Sports graphic Number books)

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著者は、本格的なノンフィクション作品ではできないことを本書で披瀝している。小市民的生活を記述できないことは、「けっこうストレス」なのだという。

「私の探検という非日常は日常があることによってはじめて支えられているのに、ベースとなる日常を切断して非日常だけを際立たせて、あたかも英雄的な行為として描いてみせても、それは片手落ちなのではないかという思いが常にあるからだ。そこで私はエッセイでこの日常の部分をチラチラとほのめかすことで、作品間のバランスをとっている。じつは私、こんなにイケナイ人間なのです、と(『あとがき』)」。

著者は、自分のイケナイ部分を本書に記す。たいへん正直である。すでに「時効」とはいえ、そこまで書いてイイの!というのもある。JRに聞かせたなら、さっそく対応策が講じられる内容だ。それで、赤字が解消するかどうかは知らないが・・・。多くは、軽妙に語られていくが、いのちに関する重い記述もある。

著者の行くところ、向かうところ、それはすぐに文化人類学的記述になる。イヌイットの生活、文化、極北の動物等について知ることができるのも本書の醍醐味だ。

書き下ろしは「忘れ物列伝」「生肉と黒いツァンパ」「原始人のニオイ」「人間とイヌ」「マラリア青春記」。あとは、既出掲載作品。


漂流

漂流

  • 作者: 角幡 唯介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/08/26
  • メディア: 単行本


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