So-net無料ブログ作成
世界史 ブログトップ

『ラインの伝説―ヨーロッパの父なる河、騎士と古城の綺譚集成』 吾孫子 豊著 八坂書房 [世界史]


ラインの伝説―ヨーロッパの父なる河、騎士と古城の綺譚集成

ラインの伝説―ヨーロッパの父なる河、騎士と古城の綺譚集成

  • 作者: 吾孫子 豊
  • 出版社/メーカー: 八坂書房
  • 発売日: 2017/01
  • メディア: 単行本



ライン河の源流地域から河口まで、川をくだりながら各地域、都市にまつわる伝説を紹介する本。昭和40年に刊行された本の復刊。著者による「序」は、1964年10月1日付け、となっている。

原著はウィルヘルム・ルーラントが集めた伝説集。1923年のドイツ旅行時、著者の父(大審院判事:我孫子勝)が、買ってきた文学書の中の一冊。「両三年前ふとした機会からこれを読み始めたところ、おもしろくてたまらず、知らず知らずの間に三百数十頁を読み通してしまった。そしてこの伝説集を読んでいる間に、いろいろな思い出や空想によってその楽しさはますます深さを加えるのであった。目まぐるしく、時には息苦しくさえある現実世界の生活に疲れた人々に、しばらくの間でもこのような清純な浪漫的な物語によって、少年時代の夢をもう一度思い起こしていただけたらと思ったので、それらの物語の翻訳を中心に、わかりにくいかと思われる点にはある程度説明を加えてまとめたものを、国鉄のレクリエーション機関紙に連続読物として掲載させていただいたところ、意外の高評で、有志の皆さんがこれを出版できるように運んで下さった」と、翻訳・出版のいきさつが記されている。

著者はいう。「一つ一つの話の中には面白いものもあれば、つまらないものもある。またドイツの中世以前の歴史的背景を良く知っていなければ理解しにくいようなものもある。しかし、ともかくも河の流れに沿って下って行くように配列された昔の物語を一つ一つ、いろいろと想像をたくましくしながら読んでいくことは、少なくともわたしにとってはたいへん楽しいことであった」。

本書をとおしてライン川をめぐる諸都市の歴史の真相(深層)を理解できるように思った。また、ワーグナーの歌劇などを理解するうえでも役立つように思った。実際、本書中には、ゲルマンの最高神:ウォータンやニーベルンゲン伝説のジークフリート、ブリュンヒルデ姫など登場し、期待をそこなうものではなかった。挿絵・写真も多数(巻頭には色刷り8ページ)用意され、索引もある。ドイツ・旅行に関心をお持ちの方は、出かける前に通読しておくと、旅行の味わいを深くすることができるにちがいない。

目次

第Ⅰ部 ラインの源流 (サン・ゴタールからボーデン湖まで)
第Ⅱ部 上部ライン地域 (バーゼルからハイデルベルクまで)
第Ⅲ部 ラインの中流、伝説の山河 (ウォルムスからケルンまで)
第Ⅳ部 周辺の渓谷および丘陵地帯 (タウヌス連山からベルク地方まで)
第Ⅴ部 ライン下流地域 (クサンテンからザイデル海まで)



ライン河―ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書)

ライン河―ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書)

  • 作者: 加藤 雅彦
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/10/20
  • メディア: 新書



ライン河の文化史―ドイツの父なる河 (講談社学術文庫)

ライン河の文化史―ドイツの父なる河 (講談社学術文庫)

  • 作者: 小塩 節
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/08
  • メディア: 文庫



ライン河―流域の文学と文化

ライン河―流域の文学と文化

  • 作者: 丹下 和彦
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本



トラックバック(0) 
共通テーマ:

『国際法で読み解く世界史の真実』 倉山 満著 PHP新書 [世界史]


国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)

国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)

  • 作者: 倉山 満
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/11/16
  • メディア: 新書



『国際法で読み解く世界史の真実』という本のタイトルを、当初たいへん胡散臭く感じた。「・・・の真実」というたぐいの本は、その実、たいへん不・真実であったりする。それに、バーっとページをめくって見たところ、国際連盟の立役者ウッドロー・ウィルソンを国際法を破壊した人物のように扱ってもいる。それで、常識人(当方のこと)としては、いよいよ胡散臭く思ったのである。国際法の権威と称する方々が、この本をどのように評価しているのか、つまりアカデミックな見地からいってマトモな本なのか確認したい衝動を覚えるほどだった。

それが、読みはじめると、めっぽうオモシロイ。それが「真実」かどうかは知らないが、少なくとも、本書のなかで記述されている内容は、本書のなかで整合性があるように思われる。要するに、信頼していいように思う。《「ウェストファリア条約」の紹介から始めない(国際法の)教科書はまがい物と思ってください》とあるが、その通り、「ウェストファリア条約」から始めてもいる。つまるところ本書は、国際法のめっぽうオモシロイ教科書といっていいのだろう。

今日の諸国家のふるまいが、国際法の理解の仕方を反映していることが示される。国際法の生い立ち、展開、その歴史的側面も示される。ヨーロッパ法とも呼ばれる国際法を盾に、列強がアジアの非文明国に進出し、支配下に置いてきたこと。そうした中、幕末日本が締結した不平等条約を撤廃するため、明治新政府が欧米列強と「対等」な立場を獲得し、文明国として扱われるため、「国際法」を盾にどのような闘いをしたのか。片や、国際法を理解しなかった朝鮮、清国はどう対応したか。そのチガイを比較しつつ示される記述は興味深い。そして、なによりも、現代・現在の日本の外交のありようが、マトモかどうかの判断もできる。その判断がマトモかどうかは、本書の記述が「真実」かどうかにかかっているが、どうも評者には「真実」のように思える。

日露戦争でバルチック艦隊を相手に勝利した東郷平八郎元帥のことを、海軍の面々は「東郷ハガネ」という商標をもじって「東郷バカね」と言っていたと阿川裕之著『井上成美』に出ていたと思う。さらに井上が、江田島の海軍兵学校長時代、東郷の事績を調べさせて報告させ、たいした人物ではない・・と悟らせたというような話も読んだ。が、対露戦争以前、日清戦争に向う時期、清国艦船と行動している英国商船を、国際法を遵守しつつも(清の武器運搬に協力したことを理由に)撃沈し、乗っていた英国人は保護したことで、英国の国際法の権威から賞賛されていたなどの情報も本書で知った。外に、陸奥宗光、小村寿太郎などへの記述もある。それらを読むと、誇らしい気分にならないでもない。

国家として見做される要件、主権の意味、国際法は強制法ではなく合意法であり、世界政府が存在しない以上、国際社会は、仁義で動くヤクザの世界に等しい・・など、目からウロコが落ちるような話にこと欠かない。本書が、国際法の教科書として、アカデミックな見地からどう評価されているかは知らない。それでも、読んでオモシロイ本であることは保証できる。


井上成美 (新潮文庫)

井上成美 (新潮文庫)

  • 作者: 阿川 弘之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1992/07/29
  • メディア: 文庫



トラックバック(0) 
共通テーマ:
世界史 ブログトップ