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『重版未定』 川崎昌平著 河出書房新社 [マスメディア]


重版未定

重版未定

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/11/26
  • メディア: コミック



マンガである。描いたのは誰かと思ったが、示されていない。著者として示されているのは川崎昌平ひとり。それゆえ、川崎氏が描いたと結論した。著者プロフィルをみると芸大を出ているというのでまちがいないであろう。

それでも、絵画に達者であれば、マンガも上手くいくかといえば、そういうものでもないように思う。著者は、「ネットカフェ難民」で流行語大賞を取っているという。要するに、多彩な能力の持ち主で著者はあるということなのだろう。

本書は、出版の世界、編集者の仕事がわかる本である。しかし、それは大手出版社ではなく、弱小零細出版社のソレである。出版の業界用語がフキダシに、たいへん小さな文字で示される。他業種(デザイナー等)と編集者とのやりとりなど、その工程も主人公の活躍をとおして知ることができる。編集者だけでなく、営業、編集長らの苦労もわかる。

そして、(これは人によるかもしれないが、少なくとも当方には)マンガとしてもオモシロイ。けっこう笑えた。

ソフトカバー製本だが、全体に良い質の紙が用いられている。これで1000円(税別)はいまどき安いと思う。

著者の他の本にも目を通してみたく思う。


重版未定 2

重版未定 2

  • 作者: 川崎 昌平
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: 単行本



流されるな、流れろ!  ありのまま生きるための「荘子」の言葉

流されるな、流れろ! ありのまま生きるための「荘子」の言葉

  • 作者: 川崎 昌平
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2017/04/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



小幸福論

小幸福論

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: オークラ出版
  • 発売日: 2016/06/16
  • メディア: 単行本



はじめての批評  ──勇気を出して主張するための文章術

はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2016/06/25
  • メディア: 単行本



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『記者と権力』 滝鼻 卓雄著  早川書房 [マスメディア]


記者と権力

記者と権力

  • 作者: 滝鼻 卓雄
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: 単行本



カバー袖には「いまジャーナリストに求められる覚悟とは! 読売新聞東京本社社長、巨人軍オーナーを歴任した著者が、「権力者への取材」「記者クラブ」「匿名報道の是非」「朝日新聞と読売新聞の違い」など、現代ジャーナリズムの最重要テーマに切り込む!」とある。

執筆動機については、「プロの役割を果たせるジャーナリストを目指す若い人たち、将来ジャーナリストを一生の仕事にしたいとこころざしを抱いているもっと若い人たちに向かって、少しでも役に立てばと思い立って、この本を書いた。混迷に陥ってしまった今日のメディアの状況が改善されればという願いもあった。(『あとがき』)」と、ある。

著者自身の「駆け出し」時代、社会部記者、司法担当記者としての経験からでた考察は興味深い。ニュースソースの探し方、つき合い方、関わり方、守り方など、具体的事例が示される。民意を知る上で「個別訪問面接聴取法」の有効性や「記者クラブ」の6つの罪についての記述もある。

登場する人物たちも魅力的だ。弁護士喜多村洋一、「朝日新聞記者の中にあって、私が尊敬する人物」疋田桂一郎・深代淳郎、読売新聞の渡邊恒雄記者、「ミスター特捜」と呼ばれた吉永祐介、「ミスター検察」と言われた伊藤栄樹、「司法界の内外から“ミスター司法行政”と皮肉を込めて呼ばれ」著者が告別式で弔辞をよんだ最高裁長官:矢口洪一など。

目次

プロローグ

覚書1 塀の上を歩け
覚書2 ディープ・スロート
覚書3 権力者たち
覚書4 駆け出し記者
覚書5 書くことと書かないこと
覚書6 西山事件
覚書7 裏世界の紳士たち
覚書8 なぜ匿名報道なのか
覚書9 朝日と読売
覚書10 記者クラブの功罪
覚書11 民意を知る方法はあるのか(トランプ時代の世論)
覚書12 特捜部、出入り禁止
覚書13 裁判をしない裁判官
あとがき


新聞記者 疋田桂一郎とその仕事 (朝日選書 833)

新聞記者 疋田桂一郎とその仕事 (朝日選書 833)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2007/11/09
  • メディア: 単行本



深代惇郎の天声人語 (朝日文庫)

深代惇郎の天声人語 (朝日文庫)

  • 作者: 深代惇郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/09/07
  • メディア: 文庫



渡邉恒雄回顧録 (中公文庫)

渡邉恒雄回顧録 (中公文庫)

  • 作者: 渡邉 恒雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/01/01
  • メディア: 文庫



検事総長の回想 (朝日文庫)

検事総長の回想 (朝日文庫)

  • 作者: 伊藤 栄樹
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞
  • 発売日: 1992/01
  • メディア: 文庫



後藤田正晴と矢口洪一: 戦後を作った警察・司法官僚 (ちくま文庫)

後藤田正晴と矢口洪一: 戦後を作った警察・司法官僚 (ちくま文庫)

  • 作者: 御厨 貴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: 文庫



田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察「栄光」の裏側

田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察「栄光」の裏側

  • 作者: 村山治
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: 単行本



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「書かないことの重大さ」(滝鼻 卓雄著『記者と権力』から) [マスメディア]


記者と権力

記者と権力

  • 作者: 滝鼻 卓雄
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: 単行本



著者は、司法記者として自分のかかわった著名な人物たちをたいへん魅力的に紹介している。そのこと自体が目的ではないが『覚書5 書くこと書かないこと』に登場する「マスコミから厳しく叩かれるような被告人たちの弁護団に加わっていたことで、その名を知られている」喜多村洋一もその一人だ。

喜多村の登場する部分を以下に引用してみる。

*************

喜多村が担当した事件を冷静に観察してみると、マスコミの網にさえ引っかからなかった検察側の“弱点”を見事に見つけ出して、検察側主張の崩壊につなげている。そんな辣腕ぶりが喜多村の魅力だ。

喜多村は、法廷での証人尋問でのテクニックに長けていた。検察側の尋問ミスを巧みに突き、そこから検察官の主張のほころびを広げていく。その法廷技術は並大抵ではない。世間で「悪党」と言われる人物は多々いるが、マスコミ報道によって「悪党」という極彩色で塗り固められた人物を弁護する仕事は、そんな簡単なことではない。事件を依頼されても初めから断ってしまう、腰の引けた弁護士が多い。

でも喜多村は逃げない。

(中略)

喜多村に聞きたかったことは、次の質問だった。

「私も含めて近年のジャーナリストは、プライバシーなどの基本的人権の尊重や個人情報の保護といった“建前”だけにこだわりすぎて、“建前”を理由にして、真実への接近を怠っているのではないか。あるいは“建前”を口実にして、書かなければならないことを書いていないのではないか」

自由人権協会の代表理事を務めている喜多村のことだ。私の問いに反論してくるのでは、と予感していた。

だが喜多村はこう答えた。

「報道の自由とは、情報を受ける市民の知る権利を実質的に保障するものです。ですから報道の自由も人権の一つであり、市民のために十分行使されるべきです。(書くべきことを書かないことは)社会全体で共有すべき情報、公共財としての情報が流通しないことになるのです。ジャーナリストの自己規制が強すぎるのではないかと思います」

(このあと、人権意識の高まりとともに、被告人の名が呼び捨てから「容疑者○○」となったこと、容疑者の過去について報道することが「基本的人権」を損なうという考え方が拡がったことについてふれられ・・)

容疑者の過去とは、出身地や家庭環境、特に教育環境、そして両親・兄弟の事情、本人の犯罪歴、病歴などである。

「犯罪は社会の病理現象である」としばしば言われる。病変の原因を突き止めるために病理解剖が実施されるように、犯罪という病変の源泉を知らなければ、犯罪が起きた背景は解明されない。背景をきちんと書き込まないと、報道の意味はなくなってしまう。

そんな思いがあって、喜多村にさらに質問した。

「(最近川崎で起きた少年事件に関連して)18歳の少年が逮捕されたが、この少年の家族のこと、育った環境、交友関係などを書いてはダメなのか。実名を出したらどうなのか。もちろん少年法の規定は知っているが」

喜多村は、少年の実名を書くことの是非には触れなかったが、「(新聞が)“書かないことの重大さ”を分かっていないのではないか」と言った。

(次いで著者は2015年2月の川崎の事件に言及し、当時マスコミが知りたいことを知るべきことを十分に報道していなかったことについて述べる)

前にも言ったが、犯罪はその時代の病理現象だ。病んだ社会の深部に潜んでいる病理をえぐるのが、犯罪報道であり、社会部に籍を置くジャーナリストたちの使命と言っても大げさではない。ジャーナリストが取材する「事実」とは、警察や検察の捜査機関が提供する事実(有罪を立証するのに必要な事実といってもいい)、さらには裁判所の判決に盛り込まれている犯罪事実(有罪、無罪を決めるために必要な最小限の事実といってもいい)ではない。逮捕状や判決文にある「事実」を探るのは、ジャーナリストの仕事ではない。

川崎で惨殺された少年の周辺にいた、子供たち、大人たちの証言を丹念に拾い集め、さらに犠牲になった13歳の少年と、首謀者と言われている18歳の少年との関係を綿密に調べることで、この事件の最深部に潜んでいる病理が見えてくるはずだ。

ここで大切なのは、取材したすべてのネタをニュースにしてはいけないということだ。取材と報道の間には、基本的人権のフィルターがあるべきであり、その判断を最適化するのがジャーナリストの力量というものだ。基本的人権に関する判断は、取材行為と報道行為の間にあるべき判断であって、取材以前の段階で行うことではない。


犯罪報道は間違った方向へ進んでしまった、と私は考えている。我々はマニュアルばかりをつくり、その結果、取材・報道に新しいニュース価値を見つけようとした者の“芽”を摘んでしまったのかもしれない。

犯行現場に花を手向ける人たちの姿が、毎日映像化されているが、そのような報道は、事件にステレオタイプな感情を植え付けるだけだ。急激に盛り上がった感情は醒めるのも早く、結果として、事件を風化させることになる。最近起きた障害者施設を襲った凄惨な事件でも、同じような映像が連日のように流されている。

再度同じことを言う。読者が真に知りたいことを書く。読者が知りたくないと感じることもあるかもしれないが、それでも知らせなければならないことは書く。

優れたジャーナリストたちは、事件の最深部まで行き着くように努めてきた、と思う。しかし、私に限っていえば、プライバシー、個人情報の保護、基本的人権の尊重という、「建前」にとらわれ過ぎて、真実への接近を困難にする “壁”を作る流れに加担してしまったという反省がある。

喜多村の言う「書かないことの重大さ」をもう一度よく考えてみたい。



騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

  • 作者: 清水 潔
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: 新書



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広告主の圧力、政治家の圧力(滝鼻 卓雄著『記者と権力』から) [マスメディア]


記者と権力

記者と権力

  • 作者: 滝鼻 卓雄
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: 単行本



著者は、讀賣新聞の記者であり経営者もつとめた方。

「あとがき」によると執筆動機は、次のようなもの。「プロの役割を果たせるジャーナリストを目指す若い人たち、将来ジャーナリストを一生の仕事にしたいとこころざしを抱いているもっと若い人たちに向かって、少しでも役に立てばと思い立って、この本を書いた。混迷に陥ってしまった今日のメディアの状況が改善されればという願いもあった。」

経験に裏打ちされた情報は、たいへん勉強になる。


以下は、ジャーナリストへの「圧力」をどうみなすべきかが記された部分。

******以下、引用******

権力者たち、それが政治家であっても公務員であっても、ときには宗教的な指導者の場合でも、彼らに可能な限り接近して取材することは、ジャーナリストの大切な使命である。中でも国民に知らせたくない秘密を握っている公務員は、本来隠すべきでない事項であっても、ことのほか秘匿したがる。または、ルール上「秘密」であっても、そのルールが間違っていることもある。

最近の「事件」だが、自民党の一部の国会議員が、言うことを聞かないメディアに対しては、広告主を使って圧力をかければいい、というような発言をして問題になった。これに対して、ほとんどのメディア(新聞社やテレビ局の組織メディア)は、「言論への圧力」というとらえ方をした。

しかし私の考え方は少々違う。

まず一部の政治家の新聞社についての理解が間違っている。私の経験でいえば、記者時代も新聞経営に関わった時代でも、広告主の圧力はあったが、それで記事を曲げた経験はない。取材を中止したこともない。中止させたこともない。

いまごろになって例として出されては、その企業には迷惑なことだろうが、1970年代にホンダの小型車が“欠陥車”と指摘されて、社会問題に発展した事件(N360事件)があった。 そのとき私は検察庁を担当していて、欠陥車事件を追っていた。ホンダ関係者とも接触したが、ホンダ車の広告掲載に関して、広告を止めるような“圧力”に直面したことはない。反対にホンダの広報担当が、会社にとって有利な情報も不利な情報も積極的に出してきた記憶の方が残っている。

いまの企業広報の担当者は、広告主という立場を使って、新聞社に圧力をかけることが、企業にとっていかに不利に働くかをよく理解している。

もう一方で間違った理解が見られるのが、メディア側の反応だ。一部政治家の抑圧的な言動を「言論に対する圧力」ととらえていること。政治家がメディアに何らかの注文をつけたとしても、それを「言論への圧力」と感じるのであれば、メディアの力があまりにも脆弱ではないか。

政治家の言動を「圧力」と感じるか、それとも「言論と公権力との闘い」と受け止めるのかによって、闘いの中心線は全然違ってくる。

「われわれは圧力を受けている被害者だ」というのは、受け身の姿勢に見える。反対にジャーナリズムを「公権力をはねのける闘い」ととらえれば、それはメディアの積極的な姿勢に映る。この二つの姿勢の違いは大きい。二つのスタンスを見比べるとき、ジャーナリストが本来備えているべきマグマ(その時代の重大な事実をつかもうとするエネルギーのようなもの)がどこかへ消えてしまったのでは、とはっと気がつく時がある。

国家のリーダー、自治体のガバナー、労働団体の指導者、宗教組織の指導者、経済界における成功者等々、絶対的な権力を握っている者は、ジャーナリストを「味方」とはけっして考えていない。むしろ「敵」あるいは「厄介な存在」とみている。もう少し噛み砕いて言えば、絶対的な権力者は、自身に都合のいい折には「味方」につけて、自身の進行に邪魔になったら「敵」と考えて排除したがるものだ。

**以上『覚書3 権力者たち』から**

週刊文春が目指すもの(「週刊文春」編集長の仕事術 から)
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2017-05-30-1


「週刊文春」編集長の仕事術

「週刊文春」編集長の仕事術

  • 作者: 新谷 学
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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