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『道歌入門 悲しいときに口ずさめ 楽しいときに胸に聞け』 岡本 彰夫著 幻冬舎 [宗教]


道歌入門 悲しいときに口ずさめ 楽しいときに胸に聞け

道歌入門 悲しいときに口ずさめ 楽しいときに胸に聞け

  • 作者: 岡本 彰夫
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/04/05
  • メディア: 単行本



ながらく春日大社の権宮司を務めた著者は、自身について次のように述べている。「大学で神道を学び、春日大社で38年間お世話になりました。だからといって、神道一辺倒かというと、そうではありません。奈良のお坊さんたちとも仲良くさせていただいていますし、仏教関係の書物も手にとります。聖書も読みます。(p123)」。著者の関心は広く、世事にもわたる。本書は、「道歌」を媒介として、著者の他者(神仏も含めた)との広く深い関係が偲ばれる内容となっている。

中学3年のとき著者は、最愛の祖母を亡くし、その菩提を弔うための、お寺通いのなかで、「道歌」と出会う。「庶民の娯楽であり、心を澄ます栄養剤でもあ」った「お説教」のなかで、説教師が「折々当を得た『和歌』を引用」する。「そのとき、出会った歌が、幕末三舟として知られた高橋泥舟が詠んだ、『欲深き 人の心と 降る雪は 積もるにつけて 道を忘るる』」。

「道徳的な和歌」である「道歌」は、「ことわざ」同様、「誰が詠んだ歌なのか、出典がわかるものが少ない」。「その渇を癒す存在となったのが、木村山治郎先生が生涯をかけて集められたという『道歌教訓和歌辞典』(東京堂出版)」。著者は、そこから「自らの座右の銘となる歌四百首を書き出し、眺めてはほくそえんで」きた。それを、「人にせがまれるままに自らの体験談や想いを加えて解説」講演してこられたようである。つまり、本書は、そのお裾分けと言っていい。

「自らの体験談」には、祖母や母親から教えられたこと、学生時代や神主時代の間違い、師友先輩から叱責されたこと、メンタルな問題(パニック障害)をかかえていたことなど、率直に飾らず記されている。

「ならぬ堪忍 するが堪忍」、「いつまでも あると思うな 親と金」、「なせば成る なさねばならぬ 何事も」など、よく口にのぼる言葉の前後の句(「堪忍の なる堪忍は 誰もする」、「無いと思ふな 運と災難」、「成らぬは人の 為さぬなりけり」)を知ることもできる。また、「やって見せ 言って聞かせて させて見せ 褒めてやらねば 人は動かじ」を「加藤さんはこれを『感動半減の法則』呼んでいました。人を扱う立場にある方は、ぜひ、参考になさってください」とまとめているのも、著者の人柄をあらわして興味深い。


道歌教訓和歌辞典

道歌教訓和歌辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京堂出版
  • 発売日: 1998/09
  • メディア: 単行本



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『フリーメイソン 真実の歴史』クリストファー・アーショー著 学研プラス [宗教]


フリーメイソン 真実の歴史

フリーメイソン 真実の歴史

  • 作者: クリストファー アーンショー
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2017/12/19
  • メディア: 単行本



本書のタイトルは『フリーメイソン 真実の歴史ーー現役メイソンが語る世界最大の秘密結社の正体』である。それで、本来秘密が保守されるべき謎の世界的団体の「真実」と「正体」を知ることができるのかと本書を手にした。

ところが、「歴史」についてみても、「秘密結社」についてみても、その「真実」と「正体」が、皆目わからない。読めば読むほど、話は分散拡散して、不思議な話題に向かっていく感がある。本書の出版社:学研プラスが発行する「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」:ムーの世界を踏襲する内容であるにちがいない。

フリーメイソンの起源についてはいくつかの説があるようだが(つまり、その歴史の真実はそもそも不分明であるといっていい)、エジプトの宗教、ヘブライ人の宗教、孔子や孟子、錬金術、体外離脱、臨死体験、ミイラ、魂、ゾロアスター教、マニ教、カバラ、スーフィズムといったものが話題とされていく。評者の読書経験に照らすと、分析心理学の祖 C・G・ユングの著作を読んでいる感覚である。

また、著者の考え(憶測)にすぎないものも示され、「真実」や「正体」には、はなはだ遠く感じられる。種々の考えの根拠として語源が取り上げられたりするが、その信憑性もあやしく感じられるものがある。(たとえば、「英語のメシアはエジプト語の鰐を意味する『メシェ』から来ています(p44)」とあるが、OEDの語源欄を見ても確認できない)。とは言っても、本書の出版はフリーメイソンのグランドマスターによって「長い間待たれていた、素晴らしい出来事(p2)」としてお墨付きを得ている書籍でもある。

評者が理解に苦しんでいるのは、著者のいう「現在は宗教的な教義があり、われわれがこのことについて理解するうえで、その教義が妨げになっているからです(p74)」ということなのかもしれない。自分の信念に反するように思えるので、受け入れがたく感じられるだけなのかもしれない。

それでも、本当に「フリーメイソンの「真実」や「正体」を知りたい方は、著者のような「秘密結社」内部の人間からではなく、まずは「秘密結社」外部の人間からの客観的な解説を読んでからにした方がいいように思う。アウトラインをわきまえてから、本書のような詳細にあたる方が無難だろう。

しかし、単なる読みものと考えるならば、著者の経歴(ロンドン大日中文学部卒、超個人心理学修士、脳神経学博士)を反映し、本書には意識の変容など、心理学的、脳科学的知見が多く見いだされるので、そうした分野に関心ある方にとっては、(読みにくいものではあるが)おもしろい内容といえるようにも思う。


フリーメイソン 秘密結社の社会学 (小学館新書)

フリーメイソン 秘密結社の社会学 (小学館新書)

  • 作者: 橋爪 大三郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/08/01
  • メディア: 新書



フリーメイソン (講談社現代新書)

フリーメイソン (講談社現代新書)

  • 作者: 吉村 正和
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/17
  • メディア: 新書



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『古代中国の社: 土地神信仰成立史 (東洋文庫)』 平凡社 [宗教]


古代中国の社: 土地神信仰成立史 (東洋文庫)

古代中国の社: 土地神信仰成立史 (東洋文庫)

  • 作者: E. シャヴァンヌ
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2018/02/11
  • メディア: 単行本



本書タイトルに表記される「社」を、当初「やしろ」と誤読したが、「やしろ」ではなく、「シャ」と読む。本書には、たいへん詳しい『解説』が付されている。そこから、引用してみる。〈20世紀フランスを代表する東洋学者エドゥアール・シャヴァンヌの「古代中国の社」は、土地の神格をまつる社の信仰を古典文献の解読をもとに考究した論文である。近代的な歴史学の方法にもとづく中国研究が出発した時代に位置しており、のちのちの研究の多くはシャヴァンヌの研究を継承し、あるいは批判するところからはじまったと言っても言い過ぎではない。〉p203〈日本における社の研究を概観すると、その多くはシャヴァンヌ説を継承し、あるは批判するところから始まったと言うことができる。叢林への畏怖という宗教感情が社の成立の起源であり、それが樹木崇拝となり、大地の精霊に対する崇拝と結びついて土壇が築かれ、そこに木を植える形式ができた。それが発展して土地神の崇拝となり、大地のめぐみである穀物の精霊に対する崇拝が土地神としての社と結びついて社禝となった。これが現在のところもっとも支持された見方であろう。〉p260

本文には次のようにある。〈自然現象が人間の営為にかさなっている。もとより土地の神である社に自然を左右するほどの影響力はない。それでも社は人びとが生まれた土地でそれぞれの心に根をおろしていた。人を養い育てる穀物の神である禝もつねに社にしたがい、ともども先祖の土地とさらには祖国を象徴するものとしてありつづけた。社と禝は封建諸侯の領国にとって目に見える具体的な統合のしるしにほかならない。それは中国語の多くの慣用句にうかがえる。〉p47

中国に宗教の根源にせまる論考といっていいのだろう。そして、日本におけるそれともふかく関係してくるのであろう。記されてある中国の風習を読んでいくと、日本のそれとの同一性を多々感じる。民俗学者の柳田國男は『山民の生活』「塚と森の話」で「やしろ」の起源について論じ、古代中国の「シャ」は「やや日本の社(やしろ)とは風習が違う」と記したという。その他、批判のあることを指摘したうえで『解説』には、〈しかし、ここで語られていた社の原初のありようは、かえってシャヴァンヌが主張した社の起源とつながる点がありはしないか。〉〈・・・とすれば、社会構造のちがいを越えてなおも東アジアの心性につらなるものはあるかもしれない。中国の社と日本の社のつながりは今後の課題としたいところである。p263〉と記されてある。

本文は、p61まで、注がp63~p199まで、「解説」はp201~p280となっている。「解説」は「1古代中国の社を考える意義」「2シャヴァンヌの生涯と学問」「3清朝末年の調査旅行」「4社に関する研究の開拓」「5研究のさらなる深化」「6学説の継承と批判」「7新たな問題提起と新出資料」「注」から構成されている。本文の章ごとの要約も含まれる。「解説」自体で立派にひとり立ちできる内容である。


フランス東洋学ことはじめ―ボスフォラスのかなたへ (研文選書)

フランス東洋学ことはじめ―ボスフォラスのかなたへ (研文選書)

  • 作者: 菊地 章太
  • 出版社/メーカー: 研文出版
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 単行本



儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間 (講談社選書メチエ)

儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間 (講談社選書メチエ)

  • 作者: 菊地 章太
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/12/11
  • メディア: 単行本




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『100の傑作で読む新約聖書ものがたり: 名画と彫刻でたどる』 創元社 [宗教]


100の傑作で読む新約聖書ものがたり: 名画と彫刻でたどる

100の傑作で読む新約聖書ものがたり: 名画と彫刻でたどる

  • 作者: マルグリット・フォンタ
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2017/11/21
  • メディア: 単行本



欧米理解のために聖書とシェイクスピア(さらに、ギリシャ神話)は欠かせないものであるように聞きます。グローバル時代にあって他国(特に欧米)との相互理解のために、相手の考えの基層にあるものを知っておきたいという方は増えているようです。一般学生の要望を受けて、わざわざ聖書の概略を知るための講座を設けた大学もあると聞きます。

本書は、その点で、たいへん有用な一冊と言っていいのではないでしょうか。ただ単にひとり聖書を読むだけでは、日本語を介した日本人の解釈・イメージとなってしまう可能性がありますが、絵画として表現されイメージ化されて欧米人の精神と一体化しているであろうモノを、本書(の名画と彫刻)から感じ取ることができるにちがいありません。その点、「名画と彫刻でたどる」のは有効であるように思います。

評者は、聖書を学び、それなりに聖書関連の美術作品に親しんできたつもりでいましたが、本書中、知っている作品は五指に満ちません。紹介されているほとんどが中世、ルネサンス期の美術作品ですが、これほど知らないものばかりとは思ってもいませんでした。また、その中には、これほどキリストを写実的に(言葉をかえると「人間臭く」)描いてしまっていいのだろうかと思えるものもあります。たいへん驚きました。また、100「ものがたり」は、イエスの母マリアの誕生前、その両親のことから始まります。これは、聖書“外典”からのモノで、『聖書(正典)』に記載のないことです。“外典”未読の評者は、これにもまた驚きました。いわば、カルチャーショックを受けたようなものです。

それでも、これら驚くべき「傑作」や「ものがたり」は欧米の(とりわけ、聖書外典も許容している)方たちにとっては、ごくフツウなのでしょう。「人間臭い」キリストといい、“外典”からの「ものがたり」といい、それらも含め本書は、カルチャーショックと共に「西洋を読み解くカギ」を提供する一冊となるように思います。


舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本



文語訳 聖書

文語訳 聖書

  • 出版社/メーカー: サキ出版
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: Kindle版




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『面白くて眠れなくなる宗教学』 中村 圭志著 PHP研究所 [宗教]


面白くて眠れなくなる宗教学

面白くて眠れなくなる宗教学

  • 作者: 中村 圭志
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



眠れなくなるほどではないが、面白い。なによりも平易で取っつきやすい。宗教学にはじめて接する方でも(ある程度の年齢以上であれば)予備知識なしに読み進めることができるにちがいない。宗教学とはいかなる学問か、世界の主要な宗教の概説、宗教学関連用語の説明が親切な仕方でなされていく。読み進めていくうちに、自分は宗教とは無縁であると考えている方ほど、実際のところ巻き込まれていることを知ることができるだろう。無自覚であっただけであるということに気づくにちがいない。

「はじめに」から引用してみる。「宗教学は信仰の世界に入り、奥義を究めるための学問ではありません。むしろさまざまな宗教の教えや習慣を比較や批判の視点をもって分析する学問です。 / 宗教学は宗教に関する人文・社会学系の学問を横断する学際的な性格の学問ですから、方法論的には、社会学あり心理学ありと、多様であり、歴史学や哲学にも広がっています。宗教学にはマクロからミクロまで、非常に幅広いデータや思考が濃縮されているのです。 / 宗教学の扉を開き、この多様性と出会うことは、あなたの世界観に深い影響を与えるはずです。 / 個人的な信仰とは別の次元において、宗教は文化として社会的な制度としてさまざまな働きをしている・・・・。種々の難問が山積する21世紀の世界において、宗教学の知見は大いに役立つでしょう。」p5,6

宗教について考えるにあたって著者は次のように述べる。「これはあくまでも便宜的な指標にすぎませんが、宗教について考えるにあたっては、個人的信仰のレベル、組織や教団のレベル、文化的な語彙と習慣のレベルを分けて考えることが大事なのではないでしょうか。 / 『宗教を信じません』と言う人が、傍目にはその社会の宗教的通念の影響を受けて行動しているように思われることは珍しくないからです。」p71

「宗教家ばかりが何かを信じているわけではなく、人間はすべからく何かを信じています。 / 自分と宗教とは無縁だと思っている人のほうが、自分が無意識に受け入れている根拠なき信念について無知なままにとどまり、宗教を通じて信念の問題と取り組んでいる人のほうが、『自分の信じていることは正しいのでしょうか』と絶えず神仏と対話することによって、信念の相対性を自覚し続ける、ということすらあるのです。」p205

1958年生まれの著者は過去を振り返る。「団塊の世代」が中心となって為された文明批判に彩られた精神の覚醒をめざすサブカルチャーの実践、地下鉄サリン事件など一連のオウム真理教事件、それによる日本人の「宗教」へのアレルギー反応、冷戦終結による政治環境の変化によるイスラム教の復興、キリスト教保守主義の活発化、国際主義よりも各国家の防衛意識の高まり、左派が後退して右傾化の進展、20世紀末頃から資本主義の先鋭化、格差や社会の分断の促進、インターネットやAIなど新しいテクノロジーによる新たな難問、、地球温暖化という『不都合な真実』が全人類的テーマとして急浮上・・・

著者は「60・70年代と世紀の変わり目頃に宗教や政治の『流行』が大きく変化する様子を眺めてきた」。そして、いう。「私自身は、こうした難問を客観的に見据えるためにも、時代の流行的思潮に埋没したくないと考えています。そして私にとって(反面教師的な形のものも含めて)知的バランスの取り方を教えてくれたのが、諸宗教の伝統に対する知識でした。宗教学を通じて、私は人生と社会に対するマクロな展望を身に着けるトレーニングをしてきたようなものなのです。」p240

同様の基礎的トレーニングを本書をとおして受けることができるのは嬉しいことだ。




教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書)

教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書)

  • 作者: 中村 圭志
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



コーランには本当は何が書かれていたか?

コーランには本当は何が書かれていたか?

  • 作者: カーラ パワー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/09/28
  • メディア: 単行本




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『雄弁の道――アリー説教集』 アリー・イブン・アビー・ターリブ 書肆心水 [宗教]


雄弁の道――アリー説教集

雄弁の道――アリー説教集

  • 作者: アリー・イブン・アビー・ターリブ
  • 出版社/メーカー: 書肆心水
  • 発売日: 2017/12/30
  • メディア: 単行本



『雄弁の道』というのでイスラム世界における修辞学の本であるかの印象をもった。しかし、そうではなかった。「訳者序文」は次のように始まる。「イスラームという教えの理解の要とされている本書は、ムスリムの基礎的教養の最良の礎とされており、本書の日本語訳の刊行は、イスラームという教えの正確な理解のための金字塔となるであろうことは疑いがない」。

「訳者序文」にはこのあと、正統4代カリフである作者アリーの説教、書簡、祈祷文からなるのが、本書であると説明され、その後、アリーの経歴が示されたのち、「カリフ(代理者、代理人を意味する)と呼ばれる存在には二種類があ」ること、一つは「神の直接の代理人である一人一人の人間個人」であり、もう一つは「神の預言者ムハンマドの代理人」として「信者たちの長に当たり、信者たちを統べる役割を果たす」者であるという。そしてその関係において「各信者の存在の方が、彼等の長よりも一段と重みを持つこと(優位であること)・・が極めて重要」と強調される。そして、「このようなウンマを構成する個々の人間の優位性が獲得されるためには、独自の世界観、思想的条件が不可欠である。この問題、つまりイスラームの基本的な政治体制について明快な解説を行っているのが、アリーの説教集『雄弁の道』が説いている政体論である」と続く。さらには、資本主義が地に堕ちたことを指摘し、「参加者すべての公正を保障する仕組みを持ち合わせない社会が、成功するためしなどありえない」とあって、「アリーの『雄弁の道」には、上述のような欠点とは無縁なイスラームの民主主義に関する重要な指摘がある。」と続く。つまり、イスラムの民主主義の特殊性(卓越性)が示される。

総合して『雄弁の道』に収められている160の個々の説教から把握できる・すべき考え(「ムスリムの基礎的教養」)とは、イスラムの民主主義、その政体の卓越性とそのあり方、また、そうあるための個々人の責任を指し示すものであるらしい。個々の160ある説教はすべてがそこに収束していくものと考えていいのだろう。

しかし、取りあげられている160の説教を見ても、よく分からない。いろいろな話をただ寄せ集めたもののように見える。本来、それぞれが独立した詩篇のようなものであったのであろう。イスラムの基礎的教養に欠ける評者としては、各説教がイスラム政体論とどう関わってくるのか、その説明を各説教ごとに脚注表示して欲しいところである。もっとも、そこの結び付きを考えるのが、本書のしかるべき読み方なのかもしれない。「ムスリムの基礎的教養」の土台のない者が、本書を読んで「金字塔」と感じるまでには、だいぶ時間がかかりそうである。


イスラーム基礎講座

イスラーム基礎講座

  • 作者: 渥美 堅持
  • 出版社/メーカー: 東京堂出版
  • 発売日: 2015/07/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




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『明治の光 内村鑑三』 新保 祐司著 藤原書店 [宗教]


明治の光 内村鑑三

明治の光 内村鑑三

  • 作者: 新保 祐司
  • 出版社/メーカー: 藤原書店
  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: 単行本



オモシロイ本だ。序文以外は既出の論文である。ゆえに本書は論文集成である。往々にしてそのような書籍はつまらなかったりする。が、しかし、本書は例外である。予想を裏切られただけでなく、久しぶりに、背筋を伸ばされる思いをした。気骨ある明治のスピリットに触れて、しっかりしろと背を打たれる思いがした。

著者は内村鑑三を、日本近代の「根源的な批判者」と呼んでいる。明治維新と文明開化、それからどんどんと日が過ぎて今年は明治150年を記念する年となる。これまでの年月をキリスト者としての内村から見るならば、NO!ということになろう。そして逆に、この世から見るなら内村はNO!であった。実際、旧制第一高等学校時代、天皇を拝むことを拒否した(「一高不敬事件」)ために、内村は教職を奪われる。「国賊」呼ばわりされ、日本を彷徨するはめになる。キリストの精神を身をもって表明すると、世から憎まれる。これはキリスト者すべてが覚悟しなければならないことである。

しかし、そのようにして、世から追われた内村を受け入れた人々がいた。心から敬愛する人々がいた。「内村の精神の磁力は、次の世代の多くの日本人の精神を垂直に立たせたのである。」本書には、そのような「明治の光」としての内村と、その影響力、磁力に引き寄せられ「垂直に立たせ」られた多くが紹介される。その中には、思いがけない人もいる。その思いがけなさゆえにも本書はオモシロイ。

たとえば、富岡鉄斎の息子:謙蔵もその一人である。鉄斎は、東京を追われて京都にやってきた「国賊」内村に息子を預ける。英語の家庭教師としてである。後に、京都帝大に奉職したその息子は、生涯内村への敬意を保つ。著者は、その出会いを描き、内村と鉄斎との間にある共通項をあぶりだして見せる。他に、正宗白鳥、芥川龍之介、宮沢賢治、大佛次郎、小林秀雄、 山田風太郎らも名を連ねる。その記述からは、内村が日本にはないと言う「大文学」とは如何なるものかも照らし出される。

本書は、明治150年記念に浮かれることなく、来し方と将来を腰を据えて考えるよい助けとなるにちがいない。


富岡鉄斎 (人物叢書 新装版)

富岡鉄斎 (人物叢書 新装版)

  • 作者: 小高根 太郎
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 1985/10
  • メディア: 単行本



夜明け前 全4冊 (岩波文庫)

夜明け前 全4冊 (岩波文庫)

  • 作者: 島崎 藤村
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/08/01
  • メディア: 文庫




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『ノアの箱舟の真実──「大洪水伝説」をさかのぼる』 アーヴィング・フィンケル著 明石書店 [宗教]


ノアの箱舟の真実──「大洪水伝説」をさかのぼる

ノアの箱舟の真実──「大洪水伝説」をさかのぼる

  • 作者: アーヴィング・フィンケル
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: 単行本



聖書と古代言語、楔形文字に関心ある方にとってわくわくする内容であるにちがいない。評者は、聖書・創世記にあるノアの方舟に関する記述を事実として受け留めているし、受け留めたいと思っている。本書のタイトルから、その真実性・信頼性を高める本かと思ったが、書籍帯に「丸い箱舟」とあり、表紙にもそれらしい姿が出ている。箱舟は「方舟」で表記されることもあり、創世記に明示されている寸法からいって直方体であるはずだ。以前、方舟をアララト山の氷河で見たという人物の本(タイトル忘失)に出ていた挿絵(あるいは写真)はまさに直方体であったので、納得したことがある。それゆえ本書は、評者の期待に反するものに思えて読む気力が萎え、しばらく手をつけずにいた。ところが、読み出すとオモシロイ。そのすべてに同意できるわけではないにしろ、わくわくしながら読む進めることができた。

お話は、楔形文字に精通した大英博物館・学芸員である著者の元にちいさな粘土板が持ち込まれることから始まる。著者は、「その書板と差し向かいで、電灯とレンズと先の尖った鉛筆を手に解読作業に取りかか」る。それは「後に〈箱舟の書板〉として知られるようになる・・箱舟のつくり方を記した詳細な説明書であったのだ」。そして、その丸い箱舟は後に再現されもする。その解読のプロセスが、大英博物館のガラスケースに鼻を押し付け「難解な文字に興味を抱き続けていた」著者の幼少時の古代語との出会いから記されていく。

この本を執筆するにあたって、著者は次のように記す。「文献学、考古学、心理学、民族学、造船技術、数学、神学、聖書釈義、美術史等の知識が必要であった。そうした知識を通して私たちは胸躍る探検の旅へと誘われるのだ」。たしかに、それらの知識が豊富に示され読者は知的冒険を体験できる。

また、その目指すところについては次のようにある。「そもそも『楔形文字』とは何なのか。それを記したバビロニア人とはどのような人々であったのか、それを理解することはできるのだろうか。本書は〈箱舟の書板〉に書かれていることを正確に説明し、すでに知られている洪水物語と比較しながら検討した上で、洪水物語がどのようにしてバビロニアの楔形文字からヘブライ語のアルファベット文字へと変換され、創世記の中に組み込まれることになったのかを検証していく」。

メソポタミア、楔形文字、シュメール語とアッカド語との関係、ロゼッタストーンやヒエログリフの話、「ギルガメシュ叙事詩」「アトラ・ハーシス物語」、さらにはウル、アッシリア、ニネベ、バビロニア、サルゴン、アシュルバニパル、ネブカドネツァル、バビロン捕囚など、聖書中に記録される地名人名出来事が多数登場する。本書をとおして、著者のいう「真実」を検証する旅を検証するのも、また楽しい。


舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本



文語訳 聖書

文語訳 聖書

  • 出版社/メーカー: サキ出版
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: Kindle版


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『年表でわかる現代の社会と宗教: 特別座談会 上田紀行・池上彰・弓山達也・中島岳志 』 平凡社 [宗教]


年表でわかる現代の社会と宗教: 特別座談会 上田紀行・池上彰・弓山達也・中島岳志

年表でわかる現代の社会と宗教: 特別座談会 上田紀行・池上彰・弓山達也・中島岳志

  • 作者: 上田 紀行
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2018/01/19
  • メディア: 単行本



〈現代の社会と宗教の動きがわかる 年表 1995~2017〉は、P32~P173があてられ、4段組みのページは、上2段は「海外ニュース」、下2段は「国内ニュース」と分けられて、月ごとに出来事が示されていく。重要な出来事は太文字で表記される。

ちなみに、掲載されている最新の出来事(太字表記)としては、2017年9月〈25日 オウム真理教(現アレフ)や分派した「ひかりの輪」が、団体規制法に基づく観察処分を更新した2015年の公安審の処分取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は、ひかりの輪の更新決定を違法とし、観察処分を取り消した。一方、アレフについて処分は適法とした。〉である。

巻頭の特別座談会は『1990年以降の激動する社会と宗教を振り返る』と題され、〈2017年8月16日に東京工業大学での公開シンポジウム、同年9月13日に行った非公開の座談会をもとに再構成〉したもの。記事リード部には〈世界的にグローバリズムが進行するなかで、貧困と格差社会が広がっています。それとともに、宗教の力、影響力が大きなものとなってきました。1990年代以降に起きた宗教とかかわる事件、ニュース、現象を振り返るなかから、現代の社会のかかえる問題点を明らかにし、その解決策を考えていきます〉とある。

シンポジウム内容は、まず本年表で取り扱われる1995年に焦点があてられ、その見出しとして立てられているのは〈地下鉄サリン事件、戦後50年・・・1995年とはいったい何だったのか?〉。以下、〈グローバリズムのなかでの「生きづらさ」と自爆テロ〉〈スピリチュアルブームの盛衰と、宗教のもつ力への関心〉〈「支え」「自由」「救い」が、現在どのようになっているのか〉〈「生きづらさ」のなかでの生きがい、人生の意味をつくりだすこと〉〈ダライ・ラマの言葉。「良き種をまいていけば、必ずや花を咲かせる」〉〈1980年代後半、オウム真理教の誕生とニューエイジの一般化〉〈この20年間の教団の停滞と、一人一人の宗教者の力の高まり〉〈SGI(創価学会インターナショナル)の海外での信者の増加〉〈被災地で、本当の苦悩に触れた宗教者たちの目覚め〉〈これからのお寺は、檀家だけでは生きられない〉〈「死者と共に生きる」ことと、被災地での天皇の祈り〉と続く。P4からP30にまたがるもので、たいへん充実した内容である。

その他に、「物故者一覧」と「索引」がついている。


宗教社会学を学ぶ人のために

宗教社会学を学ぶ人のために

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 世界思想社
  • 発売日: 2016/04/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

  • 作者: ロバート・D. パットナム
  • 出版社/メーカー: 柏書房
  • 発売日: 2006/04/01
  • メディア: 単行本




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『伊勢神宮と出雲大社 (エイムック 3915 Discover Japan_TRAVEL)』 [宗教]


Discover Japan_TRAVEL 伊勢神宮と出雲大社 (エイムック 3915 Discover Japan_TRAVEL)

Discover Japan_TRAVEL 伊勢神宮と出雲大社 (エイムック 3915 Discover Japan_TRAVEL)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: エイ出版社
  • 発売日: 2017/12/15
  • メディア: ムック



ムック本。「日本を代表するふたつの神社のヒミツ、お届けします」と表紙・裏に書かれている。

版が大きいだけに写真に迫力がある。伊勢神宮は、宮澤正明氏のカラー、出雲大社は増浦行仁氏のモノクロが印象的。

ロボットデザイナーで丹下健三の弟子筋の松井龍哉氏と『知識ゼロからの神社入門』の著者桜井治男氏の対談、など興味深い。

建築様式、全体の配置図、めぐり方、素朴な疑問の答えなど内容は盛りだくさんである。ただ、できうれば、「ふたつの神社」ではなく、それぞれの神社をそれぞれに、よりふかく扱って欲しいところ。「全方位から徹底解剖する保存版」とあるが、「徹底解剖」には遠いのではないか。印字が小さめなのも残念。


伊勢神宮と出雲大社 「日本」と「天皇」の誕生 (講談社選書メチエ)

伊勢神宮と出雲大社 「日本」と「天皇」の誕生 (講談社選書メチエ)

  • 作者: 新谷 尚紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/10
  • メディア: 単行本



伊勢―日本建築の原形 (1962年)

伊勢―日本建築の原形 (1962年)

  • 作者: 丹下 健三
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1962
  • メディア: -




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