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『裁判の原点:社会を動かす法学入門 (河出ブックス)』 大屋雄裕著 河出書房新社 [社会・政治]


裁判の原点:社会を動かす法学入門 (河出ブックス)

裁判の原点:社会を動かす法学入門 (河出ブックス)

  • 作者: 大屋雄裕
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/01/18
  • メディア: 単行本



国を訴えた裁判などで隔靴掻痒の思いをすることがある。それは訴えをきちんと審理しないばかりか、「門前払い」することから来る場合もあれば、判決は出されたものの「不当判決」であると感じてそう思う場合もある。しかし、そういう思いをさせる裁判所の側にも、ちゃんとした理屈があることを本書は教えてくれる。アタリマエといえばアタリマエだが、そういう理屈(もしかすると「屁理屈」)がアルことを知ることができるだけでも、本書を読む価値はある。けっこう難しい言葉も出て来るが、説明はその都度なされていくし、対話形式で話は進められるので、法学のシロウトも読めないことはない。

本書の内容を、「序文」から引用すると次のようなものでる。〈本書では、裁判という制度をその現実の姿において描き出すこと、律法・行政のような他の国家機能との関係でそれがどのような特徴と権限を与えられており、どのような制約の下にあるかを位置付けることによって、たとえば “社会を動かすためにあり得る選択肢の一つとして何をそこに期待すべきなのか” という議論を試みたい。それは同時に、裁判が本来そのようなものであることを予定されている姿、いわば『裁判の原点』を確認することにもなるだろう。あるいはそれによって、「木に縁りて魚を求む」状態にあるかに思えるいくつかの社会運動・市民運動(と称するもの)の再検討が促されることになるのかもしれない。 // ありがちな誤解を通じて実際の姿を記述するという狙いを踏まえて、本文では対話形式を採用した。大学のゼミのようなシーンを想定したつもりだが、すべての発言者・発言内容は架空のものである。(p4,5「序文 裁判は正義の実現手段ではない」)〉

目次
序文 裁判は正義の実現手段ではない

第1章 裁判は政策を問う手段ではない――違憲立法審査権と権利侵害
1 集団的自衛権をめぐる訴訟 2 司法権とは何か 3 裁判できるのは「法律上の訴訟」 4 違憲審査制の分類  5 適法な訴訟の条件 6 主観訴訟と客観訴訟 7 憲法訴訟を基礎付けるもの 8 裁判の決まりごと

第2章 日本の裁判所は消極的ではない――中古ゲーム訴訟と判例法理
1 日本は司法消極主義か 2 比較対象としてのアメリカ 3 判例法理の存在 4 法理を作った「整理解雇の四要件」 5 立法を排除した「サラ金訴訟」 6 立法への挑戦としてのグレーゾーン金利 7 中古ゲーム販売はなぜ訴えられたのか 8 ゲームは「映画の著作物」か 9 頒布権とは何か 10 権利は消滅するか? 11 四者四様のパズル 12 最高裁の結論 13 立法的解決と正統性の問題

第3章 裁判所は万能ではない――定数是正訴訟と救済の限界
1 定数是正訴訟で何が変わったか 2 「平等」の意味 3 合理的な期間と裁量権 4 救済をめぐる問題 5 選挙全体の無効? 6 緊急集会? 7 具体的な判決の評価 8 司法自身による制度設計 9 将来効判決の可能性? 10 何が問題なのか?

第4章 権威は絶対的ではない――司法政治論と民主的正統性
1 憲法改正という解決法 2 非嫡出子の法定相続分変更で何が変わったか 3 統治機構から見えるお国柄 4 立法と司法の関係 5 権威とは何か、権力とは何か 6 非嫡出子法廷相続分違憲決定が意味していたこと 7 いらだつ裁判所 8 政治としての司法

第5章 国会はピラミッドではない――政策形成訴訟と立法の氾濫
1 訴訟の目的は何か 2 政策形成訴訟の建前と本音 3 アピールとしての訴訟 4 格差を覆うものとしての訴訟 5 賭けとしての訴訟 6 政策形成訴訟が支えてきたもの 7 五五年体制と不動の立法 8 行き詰まる刑法改正 9 立法の再活性化 10 議員立法の活性化 11 変わりゆく政治の姿

第6章 裁判は手段であって目的ではない――訴訟の機能を支えるもの
1 なぜ訴訟なのか? 2 裁判の合理性 3 権利のための闘争? 4 司法制度改革と日本型ロースクール 5 擾乱をもたらしたもの 6 訴訟の理想と現実 7 強権を裏付けるもの 8 「合理化」する訴訟

第7章 政治は私的利害の追求(だけ)ではない――議員立法と少数者の人権保障
1 少数者の問題と政治 2 性同一性障害特例法が意味するもの 3 難航する夫婦別姓問題 4 統治者の不偏性 5 同僚としての政治家、ライバルとしての政治家

第8章 民主政に「銀の弾丸」はない――国民主権と司法の役割
1 権力分立の意義 2 三権の分立と分担 3 三権分立の非効率性 4 権力集中の危険性 5 三権分立のメイン・ターゲット 6 司法府への権限は実質的か 7 立法府と司法府と民意 8 裁判所の限界と制約 9 ディパートメンタリズム 10 日米の同じところ、違うところ 11 二つの「間違い」 12 最善の判断と、最終の判断 13 「間違い」と安全装置 14 「銀の弾丸」を望むべきか

おわりに 正義とは正しさではない


裁判所の正体:法服を着た役人たち

裁判所の正体:法服を着た役人たち

  • 作者: 瀬木 比呂志
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/05/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『0円で生きる: 小さくても豊かな経済の作り方』 鶴見 済著 新潮社 [社会・政治]


0円で生きる: 小さくても豊かな経済の作り方

0円で生きる: 小さくても豊かな経済の作り方

  • 作者: 鶴見 済
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



マーク・ボイル著『無銭経済宣言』の焼き直し・日本版書籍かと思ったが、そうではない。著者はずっと「個人の生きずらさを減らすことが最も大事だ・・・と90年代の当初から言い続けている」。最近、政治学者の中島岳志氏が、東工大でおこなわれたシンポジウム『1990年以降の激動する社会と宗教を振り返る』で、90年代を象徴する3冊として選んだ中に、本書の著者:鶴見 済氏の『完全自殺マニュアル』が入っていた。評者は当時そのマニュアル本を恐る恐る覗いたが、具体的な方法・成功率などが網羅的に取り上げられていて、よく調べたなーと感心したのを覚えている。

そういう著者の問題意識や網羅的に調べる傾向が当該書籍にも現れている。『0円で生きる』方法として記されているものも、通り一遍ではない。以前、冒険家の大場満郎氏が東京ならばゴミをあさって生きていけると話していたが、本書には「ゴミを拾う時の注意」事項が17も挙げられている。

だが、やはりこの本の魅力は著者の問題意識の方だ。「今の日本では格差が広がり、お金のない人が増えるにつれ、終身雇用への願望が強まって、統計では昭和期よりもそれに肯定的な人が多い。 / もともとお金を使わない社会では、お金をもっていないことは何の問題にもならない。例えば、伝統的な社会の人々がお金をあまり使わないことを、一概に貧しくてかわいそうと見なすことはできない。けれどもお金への依存度が高い社会になるほど、それを持っていないことは致命的になる。そして日本の社会は、この依存度が極めて高い社会だ。 / ここからもわかるとおり、お金がない人が多いという貧困の問題への対策としては、二つの方向がある。ひとつには、賃金を上げさせ行政の支援を増やし、もっとお金が貰える社会にする方向だ。もちろんこれは必要だ。けれども、同時に社会のお金の依存度を下げることもまた大事なのだ。そして本書が取る立場は後者だ。・・省略・・もちろん最低限のお金はなければならないし、この本を読んだからといって、お金なしで暮らせるようになるわけではない。けれども、楽しみながら社会を変えていく方法がここには詰まっているはずだ(「まえがき」)」。

目次は 1章 貰う(無料のやり取りの輪をつくる) / 2章 共有する(余っているものを分け合う) / 3章 拾う(ゴミは宝の山) / 4章 稼ぐ(元手0円で誰にでもできる) / 助け合う(一緒にやれば負担が減る) / 6章 行政から貰う(もっと使える公共サービス) / 7章 自然界から貰う(無償の世界) となっていて、各章ごとに具体的方法が示されていくが、「この章のレクチャー」として色ちがいの紙を用いた部分に示される歴史・民俗・文化的記述も興味深い。主題だけあげると 1章:贈与経済とは何か? 2章:なぜ私有が行きわたったのか? 3章:捨てる問題と拾う人々 4章:市とお金と資本主義 5章:日本の「助け合い」とそのマイナス面 6章:再配分は富の偏りを正す 7章:自然界と「無償の贈与」 というものだ。お金がなくても「豊かな」暮らしを営むヒントが本書には詰まっている。

脱資本主義宣言―グローバル経済が蝕む暮らし

脱資本主義宣言―グローバル経済が蝕む暮らし

  • 作者: 鶴見 済
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/01
  • メディア: 単行本



無銭経済宣言――お金を使わずに生きる方法

無銭経済宣言――お金を使わずに生きる方法

  • 作者: マーク・ボイル
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2017/08/29
  • メディア: 単行本




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目次 『裁判所の正体』 清水潔・瀬木比呂志著 新潮社  [社会・政治]


裁判所の正体:法服を着た役人たち

裁判所の正体:法服を着た役人たち

  • 作者: 瀬木 比呂志
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/05/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ニュースを見聞きしてうすうす感じていた裁判所・裁判官のオカシサ(可笑しいではなく、変、奇妙、不思議であるという意味)が一挙に分かる本。教科書で習った「三権分立」「司法の独立」など嘘っぱちであると分かる本。少なくとも日本においては、そうであると納得できる本。

日本という国はオカシイ国、「不思議の国」である。どうしてこうなったか、なってしまったか、どうすれば変わりうるのか・・考えさせられる。

日本でいうなら江戸時代末に記されたルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」。法的知識の持ち合わせがアリス以下ともいえる多くにとって、裁判所(敷衍して司法行政)の正体・真実を示した当該書籍は瞠目すべき書籍といえる。自虐「日本社会」観ではない。事実がそうなのだから、そう言うしかない。それは読めば分かる。

本書の厚み、内容からいって、1500円(税抜き)はべらぼうに安い(と思う)。

すこしばかり引用する。「第7章 最高裁と権力」から

清水:いや、もう聞けば聞くほど驚くことばかりですね。// 瀬木:いろいろ驚かれることが多いようですね。だとすれば、この対談をやった意味は大きかった(笑)。僕も、今後、制度や裁判批判だけじゃなくて、法律や法制度の基盤、法的・制度的リテラシー、市民のための法的知識の普及という観点から、機会があれば、いろいろ書いていったほうがいいかなと、今日、あらためて思いました。// 清水:私は法律とか裁判については専門外ですが、とはいえ仕事柄少しは知っているつもりでした。だけどもう聞けば聞くほどびっくりの連続です。ここまできて、行政訴訟がなぜ勝てないかがよく分かりました。なるほどそんな状態なら簡単に勝てないよと、ようやく見えてきました。// 瀬木:行政訴訟の勝訴率が低いのは、それこそ「統治と支配」の根幹にふれるからで・・・以下省略・・・

三権が依って立つ国家の「権力犯罪の闇」
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2017-07-06

**以下、目次**

まえがき(清水潔)

第1章 裁判所の知られざる日常
なぜ裁判官に一礼するのか / 裁判官は人間じゃない? / 法廷に遺影を持ち込めない理由 / 裁判官が身の危険を感じるとき / 傍聴が裁判に与える影響 / 裁判所の暗さ / 裁判官はどんなところに住んでいるか / 裁判官の通勤風景 / 裁判官はどうやって判決を下すのか / 裁判所の強固なヒエラルキー / 裁判官の出世 / 裁判官は何を目指しているのか

第2章 裁判所の仕組み
裁判官に庶民の心がわかるのか / 裁判官の天下り / 裁判官の給与体系 / なぜ裁判官をやめようと思ったのか / 裁判官の反社会的行為 / 裁判官が統制される3つの理由 / 裁判官を追いつめる新たな再任制度 / 個人の問題が制度の問題か / 日本の裁判所と世界の裁判所

第3章 裁判とは何か
民事裁判とは何か / 「押し付け和解」が生まれる理由 / 100万円の印紙はなぜ必要なのか / 民事裁判官と刑事裁判官はどこで分かれるか / 刑事裁判とは何か / 刑事系裁判官と裁判員制度の関係 / 民事系裁判官からみた刑事系裁判官の特徴 / 『不思議の国のアリス』と裁判

第4章 刑事司法の闇
足利事件ーー冤罪はなぜ生まれるか / 起訴権の独占の弊害 / 北関東連続幼女誘拐殺人事件ーー誤まっていたDNA型鑑定 / 裁判官は鑑定書をちゃんと理解しているか / 陪審員制度と裁判員制度の違い / 桶川ストーカー殺人事件ーーゆがめられた判決

第5章 冤罪と死刑
飯塚事件 / なぜ久間さんだったのか / 死刑制度とその機能 / 裁判官とどう向き合うべきか / 司法ジャーナリズムは機能しているか / ジャーナリズムと司法の劣化は相似形

第6章 民事司法の闇
名誉毀損裁判の高額化 / スラップ訴訟 / 「一票の価値の平等」はなぜ重要か / 国家賠償訴訟で国が有利な理由 / 原発訴訟と裁判官協議会 / 原発訴訟の判決・決定 / 憲法訴訟について / 押し付け憲法論の不毛

第7章 最高裁と権力
最高裁の統制の方法 / 最高裁のヒエラルキー / 最高裁長官と事務総局がもつ絶大な権力 / 裁判官が国の弁護士に?--三権分立は嘘だった / 最高裁判例に拘束力はない? / 日本の官全体の劣化 / 最高裁と時の権力の関係 / 「憲法の番人」ではなく「権力の番人」 / 最高裁判事の人事から見える構造の根深さ

第8章 日本の裁判所の未来
求められる国民のあり方 / 法曹一元化を提言した理由 / 国のあり方は司法で変わる / 日本の裁判所とジャーナリズムが進むべき道

あとがき(瀬木比呂志)



絶望の裁判所 (講談社現代新書)

絶望の裁判所 (講談社現代新書)

  • 作者: 瀬木 比呂志
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/02/19
  • メディア: 新書



ニッポンの裁判 (講談社現代新書)

ニッポンの裁判 (講談社現代新書)

  • 作者: 瀬木 比呂志
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/01/16
  • メディア: 新書



黒い巨塔 最高裁判所

黒い巨塔 最高裁判所

  • 作者: 瀬木 比呂志
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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